逆転勝利を決め、拳を握る錦織=ロイター
(5日、テニス全仏オープン)
錦織が第1セットを0―6で失ったときは、ストレート負け、もしくは途中棄権すら想像できた。腰に違和感があるのか、フォアハンドの打ち方がおかしい。腰の回転を利用して生まれるパワーを生かせていない。フォア側に球を追うときの守備範囲も狭かった。
錦織、2年ぶり8強入り テニス全仏オープン
「第1セットは自分を見失っていた。もっと深く、攻撃的にいかなきゃと思った」。錦織はあきらめなかった。豊富なショットの引き出しから、この日有効なものを徐々に見極めた。バックで鋭角に打ち込むショットが、要所で効いた。
完全に試合を支配したのは第3セットで2度の不運を乗り越えたときだ。第6ゲームで相手のショットがネット上部に当たり、ポトリと落ちる「コードボール」。ここでブレークを許した。第7ゲームでもブレークポイントを握った場面で再び「コードボール」でジュースに。でも、心は折れず、試練を乗り越えることに快感を覚え、打球を拾いまくることでリズムをつかむ錦織らしさが戻った。
対戦相手のベルダスコには3連勝中ながら、すべてフルセットの接戦に持ち込まれていた。しかし、この日は尻上がりに調子を上げ、7ゲーム連取で試合を締めた。錦織は「2日後、また素晴らしい試合がしたい」。昨年の全米で死闘の末に勝ったマリー(英)と、再び準々決勝でぶつかる。(稲垣康介)