ロンドン西部の２４階建て高層の公営住宅で１４日午前１時（日本時間１４日午前９時）前に出火し、建物全体に燃え広がった。午後５時（同１５日午前１時）現在も延焼している。ロンドン警視庁によると、少なくとも１２人が死亡。ロンドン救急サービスによれば、６８人が煙を吸うなどして市内６カ所の病院に搬送された。行方不明者が多数出ている模様だ。

英の高層マンション火災、複数の死者 ５０人以上を搬送

ほかに自ら病院にむかった人もおり、治療を受けているのは計７８人に上り、うち１８人が重体という。

ロンドンのカーン市長は１４日、「重大事態」を宣言した。英ＰＡ通信などによると、高層住宅には約１２０世帯が入居し、火災発生当時に数百人が中にいた可能性がある。

消防当局によると、午前１時前の通報から消防車４０台、約２５０人の隊員が出動し消火に当たっているが、午後５時現在も灰色の煙を上げながら延焼が続いている。出火原因は分かっていない。１９７４年築で、昨年５月に断熱材や二重サッシなどをつける大規模改修を終えたばかりだった。住民の多くは低所得者世帯だったとみられる。

火災を受けて、マンションから約３００メートル離れた青少年センターや近くの教会などが住民の避難場所になり、友人や家族の安否を心配した大勢の人が詰めかけていた。

３階に住む大学生サジャド・ジャマルバタンさん（２２）は、姉（２４）と近くのショッピングセンターへ映画を見に外出した直後、母親（５５）からの電話で火災を知り、駆け戻った。「最初は自分の家が火事だと思ったが、こんな惨事になるとは」と疲れた表情で語った。母親は消防隊によってまもなく救助されたが、「逃げ遅れた人も多いと思う」という。

火災を目撃したタクシー運転手カイオ・マネイムネさん（３１）は「プラスチックの焼けたようなにおいが辺りに漂い、建物の片側の外壁をはうように炎があっという間に燃え広がった」と話した。「男性が１人、４階くらいの窓から飛び降りたのを見た。助かったか分からない」。携帯電話の動画を見せながら話した。（ロンドン＝渡辺志帆）