相談役に就いた武田薬品工業の長谷川閑史氏=林敏行撮影
ピークを迎えている上場企業の株主総会で、相談役や顧問のポストを廃止するよう求める株主提案が相次いで出されている。東芝の不正会計問題などをきっかけに、経営トップの経験者らが退任後も「院政」を続けるのを防ごうとする動きが広がっている。
武田薬品工業が28日に開いた株主総会では、株主15人が相談役や顧問などの廃止を提案した。同社は今春、14年間にわたって社長や会長を務めた長谷川閑史(やすちか)氏がこの日の総会をもって退任し、相談役に就く方針を明らかにしていた。
総会では、提案した株主の1人が、長谷川氏の経営実績を疑問視し、相談役で残ることは「ガバナンス(企業統治)改革の動きに逆行している」と提案理由を説明。会場のほかの株主たちから拍手が起きた。
会社側は「権限が極めて限定された相談役が、強い影響力を及ぼすことは考えられない」と提案に反対を表明。長谷川氏の年間報酬額を現行から9割近く減らし、秘書や社用車を付けないことで理解を求めた。
提案が否決された後、議長を務めた長谷川氏は「ご懸念が現実のものとならないよう、誠心誠意つとめていきたい」と話した。
北陸電力や四国銀行の総会でも、相談役や顧問の廃止を求める株主提案が出されたが、いずれも否決された。一方、阪急阪神ホールディングスやJフロントリテイリングの総会では、相談役ポストを廃止する定款変更の議案が可決された。
東芝は昨年6月、不正会計問題を受けて相談役の廃止を決定。政府は相談役などの業務内容や待遇を開示するルール作りの検討を始めた。また、機関投資家などに議決権行使の助言をする米ISSは今年の株主総会を前に、相談役や顧問を新設する議案には原則として反対を推奨するとした。相談役や顧問の廃止を求める株主提案が相次ぐ背景には、こうした動きがある。
上場企業874社を対象に経済産業省が昨年実施した調査では、78%の企業に相談役や顧問のポストがあり、うち2割が見直しをしたか検討中と回答した。(野口陽)