会見する稲田朋美防衛相=30日午前、東京都新宿区、川村直子撮影
稲田朋美防衛相が東京都議選の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と発言した問題をめぐり、稲田氏は30日午前の閣議後記者会見で冒頭、「(発言は)誤解を招きかねない演説であり、撤回おわび申し上げたところだが、この場において改めて『防衛省、自衛隊、防衛大臣』の部分は撤回し、おわび申し上げる」と述べた。
特集:稲田防衛相
稲田氏は会見場に入ると、神妙な面持ちで自ら語り始めた。紺色のスーツ、べっこう縁のめがね姿。記者からの矢継ぎ早の質問に、時折肩をすくめたり、口をすぼめたりした。
記者団から、野党側が安倍晋三首相に対して稲田氏の罷免(ひめん)を求めていることを問われ、「私としては、いま我が国を取り巻く本当に厳しい安全保障環境のもとで、国民の生命財産、いっそうの緊張感を持って、しっかり職責を果たして参りたいと思います」と述べ、辞任を否定した。
自身の発言について「地元の皆様方の協力がなければ自衛隊の協力はできないと繰り返し申し上げていたし、演説のなかでもそういう趣旨、地元の皆様方の協力の趣旨を述べた」と釈明した。
一方、防衛相としての地位を利用した公職選挙法違反にあたるとの指摘については、「公選法を順守すること、これは政治家として当然でございますが、そうした地位を利用した選挙運動を行うことは全く意図しておらず、しかし誤解を招きかねない発言で撤回した」と述べた。
稲田防衛相は「防衛省、自衛隊としてもお願いしたい」という発言が公職選挙法の地位利用に該当するのでは、との記者団の追及に、「防衛大臣としてお願いする意図はなく、あくまでも自民党としてお願いするためだった。誤解を招きかねないことのため、ご指摘の公選法はしっかりと守っていくもので当然である」と繰り返した。「ですから」「何度も申し上げたように」とたびたび語気を強め、同じ文言で釈明を重ねた。
稲田氏は過去にも国会で学校法人「森友学園」との関係性などに関し、当初の説明を撤回して謝罪した経緯がある。記者団から「(発言撤回の繰り返しは)どこに原因があるか」と問われると、「弁護士として、訴訟に出廷していたことについて、事実と異なることを説明して国会でおわびした。今後は、一層緊張感をもって、防衛大臣の職責を全うしていきたい」と述べた。
稲田氏はさらに、次の内閣改造での交代の可能性を問われると、「内閣改造はいつかも承知していない。人事権者は総理だ。私が言えることは、しっかりと緊張感を持って(職務を)邁進(まいしん)していきたい。国民生活を守るために全力を尽くしたい」と述べるにとどまった。
自衛隊員の政治的行動を制限する自衛隊法と自身の発言との整合性を問われると、「隊員の政治的中立性はいうまでもない。自衛隊法の趣旨に反するつもりは毛頭なかった」と釈明した。
会見は約1時間で終了した。