9日、福岡県宗像市にある宗像大社辺津宮に参拝する人たち=小宮路勝撮影
「沖ノ島」の世界遺産登録が決まった。500年にわたる古代祭祀(さいし)の痕跡が手つかずで残る考古学的価値が世界に認められた。審議に先立つイコモスの評価で除外勧告を受けた本土の社殿や古墳群も無事「復活」。政府や地元の丁寧な説明が功を奏した格好だ。
沖ノ島、世界遺産に 勧告を覆し、8資産の一括登録決定
焦点は除外対象の4資産の処遇だった。一時は古代信仰が継続して現代に至るとの主張に疑義が唱えられ、世界というより国内的だとされた。古墳群にも学術的な裏付けの乏しさを指摘する声があった。
それだけに一括登録は厳しいとの見方もあったが、沖ノ島や大島、本土の社殿にそれぞれ3姉妹の女神がまつられていることなど資産同士の密接な結びつきを、共通する出土遺物や史料の記述で強調し、長い年月にもかかわらず信仰の本質に変化はないと説いた。その結果、8資産を一体でとらえて初めて沖ノ島の価値がわかるとの主張が各国に理解されたようだ。3女神の“泣き別れ”がなくなり、宗像大社はじめ地元関係者も胸をなで下ろしていることだろう。
だが、沖ノ島を取り巻く環境が変わるわけではない。むしろ新たな課題を突きつけられたといえる。
宗教的禁忌は島を守り、その存…