選手宣誓する本荘高校の渡辺晃介君=秋田市のこまちスタジアム
11日に開幕した全国高校野球選手権秋田大会で、本荘(由利本荘市)の主将が2年続けて選手宣誓をした。昨年は兄、今年は弟。兄と競い合って白球を追ってきた弟は、強運をつかんだ勢いで、2人の夢だった甲子園出場に挑む。
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11日に宣誓をしたのは渡辺晃介(こうすけ)主将(3年)。「厳しくつらい時期を乗り越えられたのは、仲間、指導者の方々、家族、地域の方々がいてくれたから。私たち球児は、最後の1球まで精いっぱいプレーをする」
昨夏の開会式。控えだった晃介君は、兄知晃(ともあき)さん(18)の背中を見ていた。
「私たち高校球児にできること。それは、野球を通して色々な方々に元気を届けること」。感謝の気持ちを込めて宣誓する姿は、いつもより大きく見えた。
「兄弟で2年続けて宣誓できたらすごいな」。昨秋に主将になった時から、立候補すると決めていた。
今大会の組み合わせ抽選会があった6月23日、選手宣誓の抽選もあった。
宣誓を希望してくじを引いたのは16人。昨年の17人とほぼ同じだ。「開けてください」。アナウンスに促され、周りの主将たちが紙を開けても、当選者がいない。「まさか」と思って自分の紙を開くと、「合」の字が目に飛び込んだ。「まじか!」
そのとき、知晃さんは看護の専門学校の授業中だった。母校の組み合わせしか気にしていなかったが、授業後にLINE(ライン)を開くと、野球部の仲間らから50件以上メッセージが届いていた。驚きとうれしさを隠し、弟にメッセージを送った。「ざまあみろ」。返ってきたメッセージは「ありがとう」だった。
晃介君はずっと兄の背中を追ってきた。家では2人で黙々とキャッチボールやバッティング練習をした。一度始めると意地も手伝ってなかなか終わらない。小中学校とも知晃さんの後で晃介君が主将になり、「一緒に甲子園に行きたい」と、同じ高校に進んだ。
晃介君は兄の宣誓を気にせずに、文言を考えた。それでも頭に浮かんだのは、同じ感謝の気持ちだった。監督やコーチ、仲間、OBの人たち。両親、そして兄。宣誓を終えた晃介君は「堂々と言えて声も出て、完璧でした」と話した。昨夏は初戦で敗れ、試合後、兄から「がんばれよ」と声をかけられた。「絶対に優勝して甲子園に行く。兄との2人分の思いで、気迫を込めたプレーで元気を届けたい」(石川春菜)