左から庭野勝子さん、近藤啓子さん、五十嵐智恵子さん。友人同士で協力して上映会を開いた=埼玉県桶川市南2丁目
憲法ってなに? 若者や主婦、学者、政治家など様々な立場の約30人にインタビューしたドキュメンタリー映画「不思議なクニの憲法」の自主上映会が900回を超えた。上映会の参加者がさらに知人らに呼びかけ、草の根の広がりを見せている。ドイツや韓国でも実現した。
■市民をつなぐ映画
「政治は数の力でやりたい放題なのに、この国では政治の話題は避けられがち。憲法なんて考えてもいなかった人たちに抵抗なく見てもらい、憲法を考える中身にしたかった。組織によるのではなく、市民と市民が映画でつながっていくことがうれしい」
監督の松井久子さん(71)は話す。認知症や介護をテーマにした「折り梅」や彫刻家イサム・ノグチの母親を描いた「レオニー」などの作品で知られる。
「不思議なクニの憲法」では、護憲派から改憲派まで幅広く取材を重ねた。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)や作家の瀬戸内寂聴さん、自民党憲法改正推進本部長を務めた船田元・衆院議員。自衛隊員の家族や主婦らにも話を聞いた。劇場公開は昨年5月だったが、自主上映会の希望が多数寄せられ、松井さんに「思いがけない出会い」が生まれた。
映画には外国の人に理解してもらえるよう英語の字幕がある。無料で作成したのは、アメリカ文学者で中央大元教授の藤平育子さん(73)。昨年7月、東京・武蔵小金井の上映会で松井さんと出会ったのがきっかけ。ドイツ・デュッセルドルフで8月末に上映会が予定されていることを聞き、大学の元同僚のアメリカ人の協力を得て、2週間で字幕を仕上げた。綱渡りの作業だった。
「映画に登場する一人ひとりが…