独特の投球フォームで浦和学院を苦しめた春日部共栄の大木
(24日、高校野球埼玉大会 浦和学院3―2春日部共栄)
強烈な打球直撃、倒れ込む投手 すぐに駆け寄ったのは…
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初先発の緊張にも、足の激痛にも負けず――。埼玉大会準決勝で、春日部共栄の秘密兵器が優勝候補の浦和学院を苦しめた。
春日部共栄の先発マウンドに上がったのは、背番号「20」の2年生、大木。秋も春もベンチ入りしていなかった左腕だ。「(4強入りした)春季大会が終わった時点で、準決勝で浦和学院か花咲徳栄と戦うことが分かっていた。どちらも左打者が多いので、そこに当てるために大木を育ててきた」と本多監督。
この投手起用が、ずばりとはまった。
「腕の出どころを見にくくするために」と投球動作に入ると、グラブを持った右手を顔の付近に掲げる独特の投球フォーム。打者のタイミングを外した。
四回には先頭打者の痛烈な打球が左ひざに直撃。「一瞬、当たって意識がなくなった。歩くとズキズキした」と言いながらも、ベンチ裏でアイシングをして、「大丈夫です」と直訴。「先輩たちの最後の大会。痛いなんて言っていられない」と九回途中まで力投した。
今年の埼玉は浦和学院と花咲徳栄の「2強」と言われていたが、浦和学院とともに長く埼玉の高校野球を引っ張ってきたのは、春日部共栄。創部からチームを指揮する本多監督は前日、選手にこう語りかけた。
「相手は横綱。押されて引いてしまったら一気に押し出されるぞ。押されたら、押し返せ!」
七回には3連打などで同点に追いつく粘り。九回にサヨナラ負けしたが、最後のプレーも見事だった。2死二塁、中前へ抜けそうな痛烈なゴロを主将で二塁手の川畑が横っ飛びでグラブに当てた。すぐさま拾い上げて本塁へ投げたが、間一髪、セーフとなった。
「紙一重だったな。よく止めたよ」と本多監督。「最後まであきらめない、春日部共栄の伝統の野球をやってくれた。選手たちに感謝したい」。見る者の心を打つ、春日部共栄の意地。大木は涙をぬぐって来夏を見据えた。
「この負けを、絶対に忘れません」(山口史朗)