奈良大会 準々決勝 高円―天理 五回に救援した天理の輪島=佐藤薬品、小俣勇貴撮影
(24日、高校野球奈良大会 天理11―1高円)
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股を割ってから、プレートを踏んだ。奈良大会準々決勝。天理の背番号13、輪島大地(3年)がこの夏、初めてマウンドに上がった。身長187センチ、体重87キロと恵まれた体格が目を引く。父は、大相撲の元横綱、輪島大士さん(69)だ。
父は「黄金の左」が代名詞だったが、自身は右投げ。高円を相手に10点リードの五回、救援した。「重い球が武器」と自負する最速140キロ前後の直球で押した。先頭打者を投ゴロに。続く打者を三振に仕留めて降板。わずか9球だったが、父から学んだ強気の投球はできた。
父は東京で一緒に暮らした中学時代まで、「怖かった」。怒られて、投げ飛ばされたこともあった。そんな父の現役時代の取組を動画サイトで見て、考えが変わった。「強気な姿勢と勝負強さを見て、尊敬するようになりました」
この冬、父から一通の手紙が届いた。体重は7キロ増えて球速も増したのに、投球の調子があがらない。父に電話で弱音を吐いた。そんなときだった。「高校野球は、しんどいもんやから。そういうときは誰にでもある」。手紙の言葉に励まされ、今春の県大会で初めてベンチ入りを果たした。
いまでも時折、手紙が届く。「シンプルな内容ですけど、支えになります」と輪島は言う。準決勝は27日。優しくて強い父が、応援に来てくれるかもしれない。息子は照れくさそうに言った。「チームを勢いづけるような投球を見せたい」=佐藤薬品(小俣勇貴)