後半、競り合う柴崎⑦=内田光撮影
(24日、日本2―2セネガル サッカー・ワールドカップ)
身体能力が高い相手に、日本は逃げずに真っ向から挑んだ。
日本サッカーはひとつの壁を越えた(岡田武史の目)
もし太宰治が、W杯日本代表の観戦記を書いたら…
2018ワールドカップの試合日程・結果
「デュエル(決闘)」。ハリルホジッチ前監督が口うるさいほどに求めた、局面での厳しさ。この日の日本には、それがあった。
DF昌子は、ロングボールの競り合いで手応えを得た。「五分五分のコンタクトで僕が尻餅をつくことはなかった」。恐れず、ひるまず、体をぶつけた。「190センチの相手にも行くべきところで行かなければ、余計に下に見られるだけ」
戦う姿勢は大前提。加えてパワー面のハンディを克服する工夫もあった。目を見張ったのがMF柴崎だ。
身長175センチの26歳は、前半から何度も鋭くボールに迫った。相手がトラップする瞬間に狙いを定め、球をつつく。コントロールを乱したところで、素早く距離を詰める。結果、球が前に転がり、優位な体勢で球を奪うことができた。
自らの方が優れる俊敏さや身のこなしを、守備の1対1で存分に生かす。まさに日本流デュエル。大迫の体の入れ方や腕の使い方、岡崎の相手を追い込む走りなどとともに、世界で戦う指針になり得る。
もちろん、改善すべき点はある。ひとつがペナルティーエリア内での守り方。後半26分の失点場面では、柴崎が相手に寄せきれずにクロスを入れられ、昌子もゴール前で先に球を触られた。反則をとられるとPKになるため、簡単に足を出せない難しさはある。それでも、いかに圧力をかけられるか。
今大会のアフリカ勢の中でも、セネガルはひときわスピードや力強さが光る。そんなチームを率いるシセ監督に「肉体面では互角だった」と言わしめた。
日本にたくましさを感じたのは、2度のリードを追いついたからだけではない。どんな相手にも正面から組み合える。その道が見えたことが大きい。(藤木健)