東陵の加藤篤紀投手=Koboパーク宮城
(31日、高校野球宮城大会 仙台育英5―1東陵)
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投手交代を伝えられたのは三回表の途中だった。再試合となった宮城大会準決勝。ブルペンで投げ込んでいた東陵の加藤篤紀投手(3年)は、マウンドに向かった。先発のエース佐藤瑞輝投手(同)が疲れているのはわかっていた。前日の球数は168球。いつでもいけるよう、準備をしていた。佐藤投手はこの回、2死二、三塁から適時打を浴びて2点を失った。「あとは頼む」。その言葉とともに、マウンドを引き継いだ。
昨秋までエースナンバーを背負っていたのは加藤投手だった。しかし、秋の県大会中に右ひじが思うように動かなくなり、その座を佐藤投手に譲った。負けたくない気持ちもあったが、支えるのが自分の役目だと切り替えた。この日も「瑞輝を助けたい」。それだけだった。
だが、その気持ちが気負いにつながった。いきなり四球を与えると、続く打者に適時打を浴びる。気持ちを落ち着かせようとしたが、七回までに2失点。悔しかった。
八回が始まる直前。「最後、いかせてください」。佐藤投手が願い出た。「このまま瑞輝につなぐ」。元エースの意地もあった。力強い投球でこの回を無失点に抑えた。
そして九回。佐藤投手は1点を失った。それでも最後まで戦い抜こうとするエースの姿を、ベンチからじっと見守った。「あいつがいなきゃ、ここまでやってこられなかった。お疲れ様。ありがとう」(矢田文)