彦根東の松井拓真君=小林一茂撮影
(14日、高校野球 青森山田6-2彦根東)
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■彦根東・松井拓真
彦根東の勝負は、試合の前から始まっている。先攻後攻を決めるじゃんけんだ。主将の松井拓真は、ここで勝って流れを持ってくる。
門外不出の“じゃんけん必勝法則”がある。
春の滋賀県大会前の練習試合だった。「じゃんけんから勢いをもってこい」と村中隆之監督に言われ、必勝の法則を教わった。それまでは「じゃんけんなんか五分五分やろ」と思っていた。でも監督は、目の前で必勝の法則を使い、5人中4人に勝ってみせた。法則のヒントを挙げるなら、確率論。理系だからか、すんなり納得できた。
迎えた夏の滋賀大会は法則を使った4試合で3勝1敗。甲子園では2戦2勝。5勝1敗と高い勝率を維持した。
法則を知ってから、プレーの質も上がった気がする。じゃんけんで負けても「法則通りにやって負けたら仕方ない」と割り切れた。だから試合前の心配事が一つ減って、より試合に集中できるようになった。
甲子園での8日の1回戦。じゃんけんに勝った。すると開幕戦だったけど、まったく緊張しなかった。1点を追う九回に代打で出て、ヒット。これを足がかりに、逆転サヨナラ勝ち。
この日の2回戦も、じゃんけんは勝利。4点をリードされていた四回途中、本職の投手で出番がやって来た。意気込んだが本塁打を打たれ、試合の流れを持っていかれた。「でも、いい気持ちでマウンドに上がれた。特別な時間でした」。法則のおかげで、投じた23球を存分に楽しめた。
◇
必勝の法則を知りたくて、記者は何度も尋ねたが、松井はからくりを明かしてはくれなかった。
「後輩たちに伝えますから。またここに戻ってきてもらいたいんです」(小俣勇貴)