炎を上げて燃える松田館(住民提供)
6日午後6時50分ごろ、長野県千曲市八幡にある歴史的な神主屋敷「松田館(やかた)」から出火、約3時間半後に鎮火したが、県宝に指定されている主屋(おもや)と斎館のほか、新座敷、料理の間、味噌(みそ)蔵の計5棟、延べ550平方メートルが全焼した。
千曲署などによると、市教育委員会から依頼を受けた男性(67)が出火当時、火を使ってスズメバチの巣の除去作業をしていた。男性は「ハチの巣を駆除するために火を使っていたら引火した」と話しており、署はこの火が出火原因とみて調べている。男性は煙を吸って長野市内の病院に搬送された。軽症だという。
署と千曲坂城消防本部は7日朝、現場で実況見分を行った。
市歴史文化財センターによると、同センター職員が5日、主屋の軒下に直径約50センチのスズメバチの巣を発見。市教委を通じて、男性に駆除を依頼していた。男性は出火当時、煙幕と可燃性の殺虫スプレーを用いて駆除作業をしていて、煙幕から飛び散った火が、殺虫スプレーに引火し、主屋の屋根に燃え移ったと話したという。男性は去年も敷地内でハチの巣を除去していた。
市によると、松田館は、隣接する武水別(たけみずわけ)神社の神官である松田家の神主屋敷。一帯は2006年に県の史跡に指定されている。周囲にめぐらされた堀の跡や、土塁もあり、中世の武士の居館跡だったことをうかがわせ、全国的にも貴重な歴史的遺構とされる。
焼失した主屋と斎館は、県が重要文化財として、それぞれ04年11月、14年2月に県宝に指定した。主屋は、木造かやぶきの平屋で、江戸時代の18世紀に建てられたと推定され、松田家が04年、市に寄贈していた。斎館は、古くから祭事に使われ、1861年に改築された寄せ棟造り・瓦ぶきの平屋の建物。
建物内にあった古いタンスや、…