37人が亡くなり、4人が行方不明となっている7月の九州北部豪雨では、ツイッターによる「救助要請」がネット上にあふれた。豪雨の当日から翌日にかけて投稿された1億3860万4026件の日本語ツイートに、救助要請がどれほど含まれ、どのように拡散したのか。朝日新聞記者が分析してみた。
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■「救助要請」ツイートの件数は
分析には、米クリムゾン・ヘキサゴン社のソーシャルメディア分析システム「ForSight」を使った。全世界のツイートを検索、抽出したり、ツイートの拡散数を調べたり、拡散に最も影響力のあるアカウントを特定したりすることができる優れものだ。
今回は、いずれもハッシュタグ(#)の「#救助」というキーワードが含まれているものを対象にした。「救助要請」を意味するものとして、ツイッター社によると、日本では2011年7月以降、利用者が自発的に広げていったという。
豪雨当日の7月5日から翌6日にかけて投稿された約1億3860万件のツイートの中に、「#救助」が含まれたものは4万2750件あった。ここから様々なリツイート投稿を除外すると、1154件残った。最後はこれを1件ずつ目視で確認し、224件の救助要請をしぼり込んだ。
■リツイート・引用で413倍に
まずは224件が時を追って拡散する様子を明らかにすることにした。ツイートはリツイートや投稿の引用で膨れ上がり、2日間で9万2578件となった。224件の約413倍、「#救助」ツイート総数の約2.1倍と、十分に拡散したと言えそうだ。
これらのツイートがどれだけのアカウントに届き、人の目に触れた可能性があるのか。ForSightが出した答えは、推計で4229万9630アカウント。網の目のようにつながるツイッター利用者の間を駆け巡る様子が想像できる。
■課題は拡散の「ムラ」
しかし、拡散には「ムラ」があった。
救助要請のリツイート数を件数別に集計すると、224件のうち178件(約79%)が10リツイート以下。一方で、最多は8149リツイート。孤立しかかっていた福岡県朝倉市の特別養護施設の救助要請だった。朝日新聞の取材では救助機関への通報は確認できなかった。
救助要請が届いたと推定されるアカウント数を見ると、24~2456万5444とツイートによって大きな開きが出た。一つひとつを見ていくと、爆発的に拡散したツイートの多くが、警察や消防への通報や救助活動に結びついていなかった。
なぜ、こうしたことが起きるのか。実際に救助要請をツイートしたり、ツイートを受け取ったりした当事者を捜して取材し、当時の様子から課題を探ることにした。(編集委員・須藤龍也)