羽田空港から出発する天皇、皇后両陛下=16日午前9時36分、嶋田達也撮影
天皇、皇后両陛下は16日午前、東京・羽田空港発の特別機で鹿児島県に入った。奄美群島などの3島を巡る予定で、与論島、沖永良部島の訪問は初めて。奄美は終戦から約8年間米統治下にあり、沖縄とともに心を寄せてきた場所だ。
両陛下は皇太子ご夫妻時代の1968年に初めて奄美大島を訪れ、与論島や沖永良部島の人々とも懇談した。奄美は米統治下にあったことで経済復興が遅れ、当時、島民1人当たりの所得は国平均の約半分だった。天皇陛下は沖永良部島の和泊町長に農家の粗収入を聞き、「いくらなら本土の農家と同じ生活ができますか」と尋ねたという。
両陛下は72年には徳之島にも足を運び、2003年には奄美大島で開かれた奄美群島日本復帰50周年記念式典に出席した。その際、天皇陛下は「永年にわたり、奄美群島の発展に力を尽くした多くの人々に対し、ここに深く敬意を表します」と述べた。
天皇陛下が日本の中心地から遠く離れた地への旅を続ける理由について、皇室に詳しい成城大の森暢平教授(日本近現代史)は「日本に様々な地域があることを国民に知ってもらうことも、象徴の大事な務めだと考えているのだろう」と話す。陛下自身、昨年8月のお気持ち表明で、各地への旅が「その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ」、天皇として祈るという務めを人々への深い信頼と敬愛をもってなし得た、と述べている。
元側近は、古来の天皇が高台から人々の暮らしぶりを見渡した「国見」にも通じる、とも指摘する。今回の鹿児島訪問で、即位以降、全47都道府県を2巡したことになる。
今回の旅は「遠く離れた未踏の地へ」という陛下の思いを踏まえ、即位20年を迎えた09年ごろから内々に検討が始まったという。天皇陛下の心臓バイパス手術や東日本大震災などで2度延期されたが、退位の前に、念願がかなった。
2泊3日の日程で、与論島では島一番の観光名所「百合ケ浜」に足を運び、沖永良部島では花き農家などを視察する。(中田絢子)