9日にあったジャンプ男子W杯個人第5戦予選後、ファンの求めに応じてサインする葛西紀明
ノルディックスキー・ジャンプ男子で、45歳の葛西紀明(土屋ホーム)が10日にドイツ・ティティゼーノイシュタットであったワールドカップ(W杯)個人第5戦(HS142メートル)で、今季自己最高となる10位に入った。ここまで調子が上がらず苦しんでいたが、W杯で上位30位に与えられるポイントも今季初の獲得。活躍を後押ししたのは、妻と娘のお参りの「御利益」もあった。
小林潤4位、葛西は今季最高10位 スキージャンプW杯
試合は悪天候の影響で開始時間が1時間半遅れ、1回で争われることになった。強い風が、追い風になったり、向かい風になったり、めまぐるしく変わる状況だった。葛西も出番直前で数分待たされてのスタートだった。
葛西は「風が当たったら勝ちだな、と。これは絶対来るなと思って待っていた」。期待通り、向かい風を受けて130メートルまで伸ばした。112・6点で、今季初のトップ10入り。「初ポイントだ。やったあ」と声が弾んだ。
この試合で好成績が出るようにと、妻と娘が札幌市の北海道神宮にお参りに行ってくれていたという。個人ラージヒルで銀メダルを獲得した2014年ソチ五輪の前、当時結婚する前だった妻が毎日のように通い詰めていた。「サボっていたから、風の神様もへそを曲げてたんだね」。そう言ってくれた妻は、雪の中を参拝。おかげで風邪を引いてしまったらしいが、「私に風邪がついたから、風がつくよ」と冗談交じりに激励してくれていたという。
11月下旬の個人第2戦予選(フィンランド・ルカ)では、上からたたかれるような風を受けたといい、5季ぶりの予選落ち。6位だった前日の団体戦後も「変な風に当たったら、また(ポイントを得られる)30位以内に入れないかも」と不安を漏らしていた。葛西は「(風が)ついたよ、本当に」とにんまりしながら妻への感謝を口にした。
もちろん、運だけではない。日本の横川朝治ヘッドコーチから助言を受け、助走姿勢を修正。首を少し伸ばして頭を上げるようにしたところ、「いい感じで滑れた」。運も味方につけ、復調へのきっかけをつかんだようだった。(勝見壮史)