殺人事件の被告は米軍の軍属だが、直接雇用していないから米国政府は補償金を支払わない。沖縄県うるま市で2年前、会社員の女性(当時20)が殺害された事件で、米側がこうした「二重基準」で遺族側への補償金の支払いを拒んでいることが分かった。今後も事件が起きた場合に同じ問題が起きる可能性があり、日米地位協定の不備が明らかになった形だ。
米、元軍属の賠償負担拒む 沖縄・うるま女性殺害事件
元米軍属に無期懲役判決 沖縄・うるまの女性殺害事件
特集:沖縄はいま
日米地位協定によれば、軍属(civilian component)とは在日米軍に雇用されたり勤務したりしている米国籍の民間人を指す。公務中の事件・事故については軍人と同じく米側に第1次裁判権があるなど、特権が認められている。
一方、地位協定には米軍人らによる公務外の不法行為について、米軍人らに賠償金を支払う資力がない場合や保険では解決できない場合に、米国政府が補償金を支払う制度がある。補償するのは、加害者が「合衆国軍隊の構成員または被用者(employees of the United States armed forces)」の場合と規定している。
政府関係者によると、米側は日本政府に対し、「被用者と軍属とは異なる概念。被告は事件当時、軍属だったが、米軍が雇用していたわけではなく米軍と契約していた民間会社に雇用されていた。米国政府が補償金を支払う義務はない」と主張しているという。
また、この制度に基づく補償額…