スポーツジャーナリストの中西哲生さん
平昌オリンピック・パラリンピックが終わり、いよいよサッカー日本代表がW杯ロシア大会に向かって歩みを強めます。15日には、欧州遠征でのマリ戦(23日)とウクライナ戦(27日)に向けた代表メンバーが発表されました。
中西哲生 コラム一覧
6月14日の開幕まで3カ月弱。選ばれたメンバー26人をみると、多少なりとも驚きがありました。一番の驚きは、乾が選ばれなかったことです。スペイン・エイバルでコンスタントに出場していて、パフォーマンスも悪いわけではありません。あくまでも推測ですが、W杯では選ぶという前提で今回は外したのかもしれません。
同じ3トップの左サイド、もしくは4―2―3―1の左サイドの選手として、ポルトガルのポルティモンセで今季9得点、7アシストと活躍している中島、ドイツのデュッセルドルフで4試合連続得点の宇佐美が選ばれています。乾はもう計算できるから試す必要はない、という理由で選ばれていないのであれば、理解はできます。
昨年11月の欧州遠征で外れた本田(メキシコ・パチューカ)、香川(ドイツ・ドルトムント)、岡崎(イングランド・レスター)については、本田が今回は選ばれました。香川はまだけがでプレーができていません。岡崎はけがから復帰してクラブの試合に出始めている中、コンディションがよくないと判断したという可能性もあります。本田は今回、どういうパフォーマンスをするかが見られるわけですが、香川と岡崎は不透明な状況です。
また、ずっと選んできた浅野(ドイツ・シュツットガルト)と井手口(スペイン・レオネサ)も所属チームで試合に出られず選んでいませんが、これから試合に出られれば、最終的に選ぶことは十分にあり得るでしょう。
W杯メンバーは開幕1カ月前の5月14日に、予備登録メンバー35人が選ばれます。前回までの30人から5人増え、選択の幅が広がります。Jリーグ勢にとっては、5月12、13日の第14節が最後のアピールの場です。その後、招集されたメンバーは日本国内で行われる合宿でのコンディションと、5月30日に行われる国内最終戦のガーナとの強化試合のパフォーマンスで、絞り込まれます。そして、最終登録メンバー23人の締め切りはW杯開幕の10日前、6月4日です。
ハリルホジッチ監督としては、前回のW杯でアルジェリアを率いて決勝トーナメントに進み、1回戦で敗退したものの優勝したドイツを苦しめた経験を踏まえたメンバー選考をするはずです。その経験は彼のアドバンテージで、今いいパフォーマンスをしているかどうかよりも、大会に入ってから、それぞれの相手に対してどういうパフォーマンスができるか、どう適応するか、という観点から選ぶ可能性が高いでしょう。
前回、惨敗している日本は彼のその嗅覚(きゅうかく)に期待したいところで、そういう点からも、今回の2試合で選手たちが試されるわけです。対戦相手の想定は、マリが本大会で当たるセネガル、ウクライナがポーランドといえます。
日本としてどう戦えるか、という部分がフォーカスされていたのが前回のW杯だとすると、相手にどう対処できるか、どう振る舞えるかと戦うのがハリルホジッチ監督です。アプローチは前回の逆とも言えます。
そんな中、今回の2試合は、選手たちがアフリカや東欧の選手たちに対して、どれくらい対応ができるかを見極める試合です。それを踏まえたうえで、セネガルとポーランドに本大会でどう戦うか、どういったメンバー構成がいいのかを探っていきます。試合の結果はもちろん重要ですが、確認すべきは選手たちのパフォーマンスと適応力を見極めること。
そして選手たちにとっては予備登録の35人に入るため、ハリルホジッチ監督への最後の直接アピールの場となります。
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なかにし・てつお 1969年生まれ、名古屋市出身。同志社大から92年、Jリーグ名古屋に入団。97年に当時JFLの川崎へ移籍、主将として99年のJ1昇格の原動力に。2000年に引退後、スポーツジャーナリストとして活躍。07年から15年まで日本サッカー協会特任理事を務め、現在は日本サッカー協会参与。このコラムでは、サッカーを中心とする様々なスポーツを取り上げ、「日本の力」を探っていきます。