試合終了後、スタンドへあいさつに向かう乙訓の選手たち=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、遠藤真梨撮影
(31日、選抜高校野球 三重2―1乙訓)
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強振した打球は、一塁手へのボテボテのゴロになった。乙訓の主将で5番・三塁の中川健太郎は、懸命に走った。「頼む、セーフになってくれ」
1―2と1点を追いかける八回2死二、三塁。「真ん中に来た球は全部振ってやろう」とこの日4度目の左打席に立った。思い描いたコースに来たが、右横手投げの三重・福田が投じた球種は緩いスライダー。タイミングが合わずに引っかけた。一塁への全力疾走も及ばなかった。
中軸を任せられながら、この日は4打数無安打。2回戦のおかやま山陽戦でも5打数無安打と、甲子園でヒットを打てなかった。「相手投手の動く球をとらえきれなかった」。自慢の打棒を封じられた。
「これで守備でも貢献できなかったら何のためにいるのかと」。好機に倒れた直後の八回の守りで、三遊間のゴロに飛びついて好捕したのは、主将としてのせめてもの意地だった。
京都の府立高で野球部の寮はなく、部員は自宅から通う。「チームメートと24時間一緒にいるのは、甲子園を戦う間の宿舎生活が初めてだった。いつもより多く野球の話が出来て、団結力も高まった」。そして個人的には「動く球も芯でとらえられるように、手元まで引きつけて打つ練習を繰り返したい」。甲子園で培ったチームワークと、中軸打者としての打撃に磨きをかけ、夏に戻ってくる。(平井隆介)