シリアでの化学兵器使用疑惑を受け、国連安全保障理事会は9日(日本時間10日午前)、緊急会合を開いた。米国のヘイリー国連大使は「正義が果たされなければならない時期だ」と述べ、「米国は対応する」と宣言した。一方、シリアのアサド政権を支えるロシアは米国の軍事行動は「重大な影響」につながると警告した。
米、シリアに軍事攻撃の可能性 トランプ氏「近く決断」
ヘイリー氏は「ロシアの両手にはシリアの子どもの血がついている」と述べ、通算11回の拒否権行使でシリア政府を擁護してきたロシアを非難。「歴史は安保理が責務を果たしたか、シリアの市民保護に失敗したかのいずれかの瞬間として記録するだろう」と述べ、「いずれにせよ、米国は対応する」とした。
会合に先立ち、米国は真相解明に取り組む調査チームを設立する決議案を理事国に配布。朝日新聞が入手した9日付の案によると、攻撃があった4月7日の軍の飛行記録やヘリコプター部隊の指揮官の名前の提出などをシリア政府に義務づける内容で、ロシアのネベンジャ国連大使は「受け入れられない要素がある」と記者団に述べた。ロシアが拒否権を使えば、米国はそれを口実に武力行使に踏み切るとの観測もある。
ネベンジャ氏は会合で、あったとされる化学兵器の攻撃の軌道や時期に不自然な点があると指摘し、疑惑を否定。ロシアはシリアの要請に基づいて部隊を配備しており、米国の出方次第では「重大な影響を引き起こしうる」と警告した。同氏は会合後「米国が軍事オプションを模索しているのではないかと懸念している。とても危険だ」と記者団に述べた。
安保理は緊急会合後も非公開の協議を続けたが、結論は出なかった。(ニューヨーク=金成隆一)