国民投票公報の構成
教えて!憲法 国民投票:3
特集:教えて!憲法
憲法改正案に賛成か反対か。国民が冷静に判断するためには、公正中立でわかりやすい情報が提供される必要がある。
憲法改正が発議されると、広報の役割を担う公的な組織として、国会内に「国民投票広報協議会」がつくられる。
委員は衆院議員と参院議員が10人ずつ。各会派の議員数に応じて割りあてられる。改憲案に反対する会派から議員が選ばれないことになる場合は「選任するようできる限り配慮する」と法律にさだめられている。
改憲案を3分の2以上の賛成多数で可決した国会の議員がみずから広報活動にかかわるのでは、賛成側にかたよるのではないか。第三者機関にまかせるべきだ――。そんな懸念が国民投票法を議論する段階で指摘された。だが第三者機関にしても、中立に人選するのはむずかしいとして、国会が担うことにした。
では、広報協議会はどんな活動をするのか。一つは、国政選挙などで各家庭に配られる選挙公報のような「国民投票公報」をつくることだ。
公報の構成は法律でさだめられ、三つにわけられる。一つは改憲案とその要旨などで、「客観的かつ中立的」な内容にしなければならない。残る二つは「賛成意見」と「反対意見」で、両者を「公正かつ平等に扱う」とされている。賛成と反対が同じ分量で、各政党がつくった原稿を載せることになりそうだ。
投票日の10日前までに各世帯に配られる。ただし、10日前というのは発議から投票までが最短の60日間だった場合、原稿の作成や印刷にかかる時間を考慮したもの。期日前投票が始まるのが投票日の14日前なので、それまでに配布されるのが望ましいのは当然だ。
公報以外にも、広報協議会は選挙の際の政見放送のようにテレビ・ラジオでも広報放送をする。公報と同じような構成で、協議会がつくる改憲案や要旨と、政党などに無料枠としてあたえられる賛成意見、反対意見が一つの番組になったものが想定されている。新聞広告でも、同じように三つを掲載する。当初案は賛成・反対の放送時間や分量は国会の「議員の数を踏まえて」きめるとしていたが、同じ量に修正された。
これらの放送、新聞広告がどれくらいの時間やスペースで、どの程度の頻度になるのか。期間中、同じ内容のものが繰り返されるのか途中で変わるのか。そうした具体的なことは未定だ。広報協議会が担うことから、その運営に関しても、多数を占める賛成派の意向が強く反映するのではないかという懸念がある。
ほかには、インターネット上に公式サイトをもうけるなど周知手段を工夫することになっている。
広報協議会以外の公的機関、たとえば政府や地方公共団体が改憲案の解説資料などを独自につくることは法律にさだめがなく、想定されていない。選挙管理委員会による広報活動は、投票方法など手続き的な事柄に限られる。(蝶名林薫)