伝銷組織が団体生活を送るという団地を巡回する警察の車列。住民の大半が組織のメンバーと言われている=3月30日、中国広西チワン族自治区南寧、平賀拓哉撮影
中国で「伝銷(チョワンシアオ)」と呼ばれるマルチ商法やねずみ講の被害が止まらない。伝銷組織は集団生活でメンバーを洗脳し、金を吸い上げる。中国政府の摘発に抗議する組織も出現しており、習近平(シーチンピン)政権にとって無視できない社会問題となっている。(南寧〈中国広西チワン族自治区〉=平賀拓哉)
中国南部の広西チワン族自治区南寧。「開発プロジェクトに投資する」とうたって出資者を連鎖的に集める伝銷組織が多く、あちこちで勧誘活動をしている。
「皆さんはここに来る前、南寧に伝銷組織があると聞いたでしょう。でも国はこの街を『全国文明(社会が高水準に発展して文化的な)都市』に指定した。どちらがウソですか?」
市内の「広西計画館」で、かっぷくの良い東北なまりの男が熱弁を振るっていた。同館は都市の発展ぶりや将来計画を宣伝する公的施設。架空の開発事業を信じ込ませるには格好の場所とみた伝銷組織が連日、勧誘に利用する。
土産物店が並ぶ商店街も勧誘場所の一つだ。ある店のテーブルに、表紙に習近平国家主席の写真が載った「新時代の証し 中国の夢は私の夢」という本が置かれていた。伝銷の勧誘でよく使われる出版物だ。
記者が客を装って話しかけると、店主は「江蘇省から4年前に来て、投資で大金を手にした」「資金は国が管理する。私たちは国に守られている」と出資を勧めてきた。だが具体的な出資方法や利益についてはあいまいな説明に終始した。
被害者支援団体や被害者家族の話をまとめると、手口はこうだ。
メンバーは親族や友人を南寧に…