事故現場に置かれた献花台に次女真緒さんの遺影を立てる小谷真樹さん(右)=23日午前7時42分、京都府亀岡市、本多由佳撮影
京都府亀岡市で集団登校中の小学2、3年生の女児2人と付き添っていた女性(当時26)が、無免許の少年(当時18)の車にはねられ死亡した事故から、23日で6年となった。妊娠7カ月の長女、松村幸姫(ゆきひ)さんを亡くした建設業の中江美則(よしのり)さん(54)=京都府南丹市=はこの日、罪を犯した人の立ち直りを支援する団体を発足させる。事故後の、思いがけない交流がきっかけだった。
事故があったのは午前8時ごろ。死亡した3人のほか、登校中の児童7人が重軽傷を負った。少年は前日未明から友人らと交代しながら無免許で軽乗用車を運転し、居眠り運転だった。自動車運転過失致死傷などの罪で懲役5~9年の不定期刑が確定した。
つらい気持ちを抱えながら日常を送っていた中江さんは約2年前、仕事先の建設現場で、40代の男性と出会った。「どこかでお会いしましたか。顔を見たことがあります」と言われた。事故の被害者遺族として取材を受けたことを思い出し、「テレビやろ」と答えた。男性はハッとした表情になった。
「実は、刑務所の中で、テレビのニュースに出ている中江さんを見たんです」。男性は傷害罪などで受刑経験があると明かした。声を震わせて「被害者の立場で闘っている人がいることを知り、後悔した」と話した。中江さんが幸姫さんの遺骨をいつも持ち歩いていることを伝えると、男性は黙って聞いていた。その後、毎日のように現場で顔を合わせた。なぜ罪を犯したのかや反省の気持ちを打ち明けるようになり、2人の交流が深まっていった。
事故の加害者の少年は2010年にもバイクの集団暴走で逮捕されていた。「再び無免許運転し、命を奪ったことは絶対に許せない」という中江さんの気持ちは変わりはない。
しかし、罪を犯した後、立ち直りに悩む人もいると知り、支援を考えるようになった。「被害者の声を聴き、『これ以上、他人も自分も苦しめたくない』と思ってほしい。再犯を防ぐ最後のとりでになりたい」と話している。
立ち上げる支援団体の名「ルミナ」は、幸姫さんが好きだった神戸ルミナリエからとった。ラテン語で「星の光」。「加害者側にも光を当てたい」との思いを込めた。23日、京都市で開く発足のシンポジウムに、あれから交流を続けている元受刑者の男性らとともに登壇する。(白見はる菜)
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亀岡市内の現場では、事故が起きた午前8時ごろから追悼法要が営まれ、遺族ら約30人が手を合わせた。
小学3年生だった長女の奈緒さん(当時8)を亡くした会社員、横山博史(ひろし)さん(43)=亀岡市=は「傷は癒えない。事故を昨日のことのように抱いたまま、生きていくのだと思う」と語った。2年生の小谷(おだに)真緒さん(当時7)の父親で会社員の真樹(まさき)さん(35)=同=は「この日はいつも以上に真緒の声が聞きたいと思ってしまう」と漏らした。