大学生初戦を10秒41で終えた東洋大の宮本大輔(左端)
陸上の今季トラックシーズンが本格的に開幕した。男子100メートルで大化けする可能性があるのが、京都・洛南高時代に高校総体を2連覇した19歳、宮本大輔(東洋大)だ。22日、島根・浜山公園で行われた出雲陸上で大学デビューした。
タイムレースを2本走り、ともに10秒41。自己ベストの10秒23には及ばず順位も2位だったが、昨年11月以来の実戦に「初めて東洋大のユニホームを着たので、新鮮な気持ちで走れた。初戦にしては、そこそこいい動き」と納得顔だ。
日本代表選手に競り勝つ
手応えをつかんだ。高校時代は、同世代相手とは落ち着いたレース運びができるが、トップ選手と走ると慌ててしまう傾向があった。だが、この日は安定した走り。特に2本目は、2015年世界選手権(北京)の400メートルリレー日本代表で、自己ベスト10秒19の長田拓也(富士通)に競り勝った。
宮本は山口出身。スタートからの加速が持ち味で、10秒56の日本中学記録を持っている。憧れる桐生祥秀(現日本生命)の背中を追うように、京都・洛南高へ進んで力をつけた。さらに桐生を指導する土江寛裕コーチに、自分も指導してもらいたいという強い思いから、大学も桐生と同じ、東洋大を選んだ。
練習では、卒業後も東洋大に練習拠点を置く桐生と、ほぼ毎日のように一緒に汗を流す。9秒98の日本記録を持つ先輩と過ごす時間は刺激的だ。「桐生さんはスタートからの爆発力がすごい。自分も得意分野なのに、それを上回る。どうなればああなるのか。見ていて参考になる」
体重59キロ、パワー不足課題
課題の一つは筋力だ。172センチ、59キロという体格はトップ選手と比べると細い。「お尻の筋肉はそこそこあるんですけど、上半身は特に薄っぺらい。全体的にパワーアップが必要」。ただ、土江コーチは「この1年間は観察期間」といい、時間をかけて長所、短所などを分析し、強化の方向性を決めていく方針だ。
宮本への期待の高さから日本陸連は今年、2020年東京五輪や、国際大会での活躍を期待する若手「ダイヤモンドアスリート」に認定した。10秒23の自己ベストは、9秒台に突入した桐生をはじめ、日本のトップ選手とまだ差があるが、本人は前向きだ。まずは10秒1台、到達したら10秒0台と段階を踏んで、20年の選考会までに勝負できる力をつける青写真を描く。
次戦は今週末の織田記念で山県亮太(セイコー)、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)らと走る予定だ。「東京五輪は決まったときから出たい気持ちがある。絶対無理という位置でもないと思う」。どこまで伸びるのか、今後が楽しみだ。(遠田寛生)