凍結保存された受精卵を別居中の妻が無断で使って第2子を出産したとして、奈良県の外国籍の40代男性が子との父子関係がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決が26日、大阪高裁であった。江口とし子裁判長は請求を却下した一審・奈良家裁判決を支持し、男性側の控訴を棄却した。男性側は上告する方針。
「父子関係」認める 受精卵無断使用、元夫の訴え却下
判決などによると、男性は2013年10月ごろから妻だった女性と別居。女性は男性の同意を得ずに、第1子を体外受精したクリニックに凍結保存されていた受精卵を移植し、15年4月に第2子を出産した。2人は16年に離婚した。
高裁判決は、2人が別居中も第1子も交え外出していた点などを踏まえ、「夫婦の実態が失われていたとみることはできない」と指摘。民法の規定に基づき、第2子は男性の嫡出子と推定されると述べた。一審判決は「母体への受精卵移植時に夫の同意が必要」としたが、これについては判断しなかった。高裁判決について、女性の代理人弁護士は「子の福祉や利益を重視した結論」と評価した。
高裁判決にあたり、男性は朝日新聞の取材に応じ、「父親は子どもに進むべき道の選び方を示す大きな責任がある存在」としたうえで、移植を拒んだのに女性が第2子を妊娠していたと知り、「存在を無視された気持ちだった」と語った。「100年以上前にできた民法は現代のテクノロジーと合ってない。生まれてきた子もかわいそうだ。国は現状にあった法整備をしてほしい」と訴えた。(大貫聡子、畑宗太郎)