政府は27日、民間事業者が膨大な医療情報を集め、匿名化して企業や研究機関に提供できる次世代医療基盤法の基本方針を閣議決定した。法施行は5月11日。情報漏洩(ろうえい)への懸念については、患者が拒否すれば情報は事業者に渡らない仕組みとし、医師や看護師が初診時に書面で説明することとする。
膨大な医療情報は「医療ビッグデータ」と呼ばれ、新薬の開発や副作用の発見、病気の早期診断などへの幅広い応用が期待されている。国内では、診療報酬明細書(レセプト)のデータが主に使われているが、病名が不正確だったり、検査値が載っていなかったりする課題があった。
新制度では、国が認定する事業者が、病院や診療所から実名で診療録(カルテ)や検査データを集約できる。複数の施設から寄せられた同一人物の情報を統合して保管。個人が識別できないように加工して、有料で企業や研究機関に提供する。情報の管理能力や匿名化技術で一定の基準を満たしているかを審査して国は事業者を認定する。
この制度では、患者本人が拒否しなければ同意したとみなし、事業者が情報を集めやすくする。知らないうちに提供される懸念があるため、情報を提供する病院や診療所は原則、すでに通院している患者を含めて法施行後の最初の受診時に医師や看護師が書面で説明する。患者が16歳未満か、判断できない状態の場合は、保護者らにも説明する。
情報の提供までに30日間ほどあけ、患者が拒否できる機会を担保し、いつでも情報提供の停止を求めることができる。説明を受けていない人の情報は提供できない。
医療情報に詳しい京都大の中山健夫教授は「レセプトとはレベルの違うデータが集められ、医療の質の向上に役立つ。情報の取り扱いは慎重を期すべきだが、適切に活用すれば大きな価値がある」と話す。(阿部彰芳)