4月14日、セ大阪―FC東京戦の視察に訪れた日本代表の西野朗監督。英国での格好と大きな変わりはない
飾らない人柄が海外でよく出ていた。
4月28日午後、イギリスの南部サウサンプトン。ロンドンから電車で1時間ちょっとの街にあるスタジアムに、1人でふらっと現れた。日本代表の西野朗監督だ。送迎の車は付いているものの、「1人だよ」と言う。
待ち構える日本の報道陣に軽く会釈すると、「ちょっと待って、入り方が分からないから」と言った。その後、報道陣が出入りする扉に間違って入り、係員に止められると、恥ずかしそうに笑って、引き返した。
受付を済ますと、報道陣の前に戻ってきた。「何か聞きたいことある? 今やろうか」。自ら囲み取材に応じた。気さくな人だ。
代表監督就任後、初の欧州視察は、海外でプレーする選手たちに監督交代の経緯を説明することと、コンディションの把握が主な目的だ。「直接見られると違うからね」。最初に訪れたのが、サウサンプトンに所属するDF吉田麻也の試合だった。試合後、吉田に「混乱しているとは思うが、理解してやってほしい」と語りかけたという。
この日は曇り空で、気温10度以下。多くの観客がコートを羽織っているなか、西野監督は日本にいる格好そのままだった。黒い手提げカバンに、ノーネクタイのスーツ姿。「1人だし、コートもないよ」。ぼそっと、つぶやいていた。一般の観客に交じって、屋外での観戦はさぞ寒かったろう。
第一弾は「キャンセル」
実は、視察一発目は当初サウサンプトンではなかったという。ドイツ1部のバイエルン・ミュンヘンと、日本代表の主将MF長谷部誠が所属するフランクフルトとの試合を予定していた。「バイエルンに行ければ、敵の選手も視察できると思ったなかで、キャンセルになって……」。バイエルンにはワールドカップで日本が対戦するポーランドのエースFWレバンドフスキと、コロンビアのエースFWロドリゲスがいる。だが、残念ながら長谷場が出場停止だった。
「今後の日程は微修正しなくてはいけないけど、まずはスペインに行く。選手が出場すればいいのだけど」と迎えの車に乗り込んだ。翌30日、スペイン1部ヘタフェのMF柴崎岳はベンチ入りしたものの、出場機会はなかった。2部クルトゥラル・レオネサのMF井手口陽介はベンチ外。今回の視察、どうも順調な出足とはなっていないようだ。
西野監督は10日間ほど欧州に滞在する。(吉田純哉)