4月18日のルヴァン杯広島戦でプレーする長谷川⑨と小林裕紀④。公式戦10試合ぶりの勝利を挙げ、立て直すかに思えたが……
リーグ日程の約3分の1を消化したサッカーJ1で、名古屋が泥沼の8連敗で最下位に沈んでいる。風間八宏監督(56)は「1試合1試合です」と長期的視点を強調するが、1994年のクラブワーストの連敗記録まであと「1」と迫った。「お荷物クラブ」と揶揄(やゆ)されたリーグ草創期の嫌な記憶が脳裏をよぎる。次戦は5月2日のセ大阪戦。ホームで悪夢に終止符を打てるか。
開幕2連勝したが…
「プロだから結果なんで、しっかり反省をしてまた……。下を向いてても」。4月28日、第11節のFC東京戦で敗れた後、MF長谷川アーリアジャスール(29)は声を振り絞った。風間監督は早口で「色々なアクシデントがあった。きょうは敵が多すぎた」と審判団への不満をのぞかせるなど、チーム内にはどんよりとした停滞感が漂う。
2月の開幕当初は躍進を予感させた。元ブラジル代表FWジョー(31)、元豪州代表GKランゲラック(29)、昨季途中から加入し、「魔術師」の異名をとるMFガブリエルシャビエル(24)ら強力助っ人を擁し、開幕2連勝。しかし、1分けを挟んで3月18日の第4節以降、勝利から見放されている。
92年のJリーグ発足時から加盟する「オリジナル10」の名古屋にとって、8連敗は94年の9連敗に次ぐ2番目に悪い記録だ。
前後期の2部制だった94年、名古屋は後期に9連敗した。8連敗の後、ゴードン・ミルン監督が解任され、三浦哲郎監督代行が指揮。黒星を一つ重ねた後、最終節の広島戦に勝ち、10連敗は阻止した。J2はまだなく、降格はなかった。
名古屋は93年が10チーム中9位、94年が12チーム中11位と低迷。浦和と並んで「お荷物クラブ」とささやかれた苦い過去がある。2016年には初のJ2降格を味わった。風間監督が就任した翌17年はJ2で3位。昇格プレーオフを経て、今季J1の舞台に戻ってきた。
11戦で計23失点
低迷の原因は守備の崩壊だ。けがや体調不良が続出し、指揮官が「紅白戦のメンバーもそろわない」と嘆く選手層の薄さもあり、11試合で計23失点。「取られたら取り返す」攻撃的サッカーを志向するチームだが、J1では挽回(ばんかい)は難しい。
頼みの攻撃陣もかみ合わない。細かいパスをつなぎゲーム支配率を高める理想を意識するあまり、ビルドアップの段階でボールを奪われてカウンターを受ける場面が目立つ。ゴールを奪うのではなく、パスをつなぐことが目的になってしまっている印象だ。
これまでに奪った11得点もジョー、ガブリエルシャビエルが4得点ずつ、DFホーシャ(29)が3得点と、すべてブラジル人助っ人が挙げているのも、チームとしてバランスを欠いている感が否めない。
主将のFW佐藤寿人(36)は、昇格プレーオフからJ1復帰を果たした立ち位置を自覚し、「(18チーム中)18番目からのスタートでどこまで積み上げられるか。ストレスはあるけど勝つためにやり続けるしかない」と話す。ホーシャも「雨の次は必ず晴れる。技術だけでなく、力や気持ちで戦い続けることも大事。それをやり続ける」と前を向く。(金子智彦)