北朝鮮の人権問題をテーマにしたシンポジウムに参加したワームビア夫妻=3日、米ニューヨークの国連本部、園田耕司撮影
訪米中の加藤勝信拉致問題担当相と拉致被害者家族は3日、米ニューヨークで、北朝鮮に拘束され帰国後に死亡した米バージニア大学生、オットー・ワームビア氏(当時22)の両親と面会した。加藤氏らは拉致問題を北朝鮮の人権侵害問題として訴え、夫妻に連携を呼びかけた。ただ、米政府の最優先課題は拘束中の米国人3人の解放にある。トランプ米大統領が米朝首脳会談で拉致問題にどこまで強く言及するかは見通せない。
「拉致問題は拉致された方の夢を奪い、家族との大事な時間を引き裂く、人権・人道上の大変ゆゆしき大問題だ」。加藤氏はワームビア夫妻を前にこう述べ、拉致問題解決に向けた協力を呼びかけた。拉致被害者の横田めぐみさんの弟、横田拓也さんは「皆さんの苦しみに私たちは同情できる。一緒に北朝鮮に対して力を出していきたい」と語った。
ワームビア夫妻は、米国内で北朝鮮の人権問題の被害者として広く知られる。息子のオットー氏は昨年6月、北朝鮮に約1年半拘束された後に解放されたが、脳を激しく損傷しており帰国して数日後に死亡。トランプ氏は今年1月の一般教書演説で夫妻を議会に招待し、北朝鮮の人権状況を厳しく批判した。夫妻は4月下旬、北朝鮮を相手取り、連邦地裁に損害賠償訴訟を起こしている。
日本政府はそんな夫妻に注目。トランプ氏が拉致問題に理解を示すのは、「ワームビア氏の影響も当然あるだろう」(政府関係者)とみる。トランプ氏が力を入れる北朝鮮の人権問題と拉致問題を結びつけ、米朝首脳会談での米国の協力を取りつけたいという思いがある。日本政府は夫妻と連携を図るべく、水面下で接触を続けていた。
夫妻は加藤氏らとの面会後、国連本部で行われた北朝鮮の人権問題をめぐるシンポジウムに出席。日本が主導して米国、オーストラリア、EUと共催したものだ。妻のシンディ氏は席上、「私たちはオットーのためにすべての(拉致被害者の)家族のために立ち上がらなければいけない。オットーの死を無駄にしてはいけない」と訴えた。夫妻によると、オットー氏の死後、シンポジウムの場で話したのは初めてという。
トランプ氏は過去の大統領に比…