アジア選手権を制し、4月30日に帰国して喜びを語る福島由紀(左)と広田彩花=成田空港
バドミントンの女子ダブルスで世界ランキング3位の福島由紀、広田彩花組が4月末に所属先の再春館製薬所を退部した問題で、2人が移籍先の岐阜トリッキーパンダースを通じて、移籍する思いを初めてコメントした。2人は再春館製薬所を辞めた今井彰宏元監督についていく覚悟を語り、「彰宏さんと東京五輪を目指す」などとしている。
福島、広田組はリオデジャネイロ五輪金メダルの高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)のライバルで、4月末のアジア選手権決勝でも高橋、松友組を決勝で破って初優勝を決めた。9日時点の世界ランキングの3位は、日本勢最上位だ。その福島、広田組が所属先を巡って騒動に巻き込まれている。
再春館製薬所のバドミントン部を率いていた今井元監督が今年2月に退社。再春館製薬所は今井元監督が国際大会の賞金を選手に渡さないなどの「金銭的不正行為があった」などとして日本バドミントン協会に告発した。
一方で、今井元監督側は取材に対し、「賞金の一部を選手の了解を得て部の活動費に充てたが、全額返金した」「再春館製薬所でパワハラ行為を受けていた」などと主張しており、対立している。
福島、広田組は今井元監督について退部することが発表されていたが、アジア選手権からの帰国会見などでは移籍に関する質問には答えていなかった。
コメントの全文は以下の通り。
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報道機関の皆様から移籍についてご質問をいただいていますので、今、ご説明出来ることを文章にしました。私たちはプレイに集中したいと思っています。記者会見では試合や練習以外のご質問には答えを控えますのでご容赦ください。
今回の移籍理由について「もっと成長して次のチャレンジをするため」とご説明しました。もっとはっきり言うと、彰宏さんと東京オリンピックを目指すためです。
私たちは、社会人になって日本代表に入るまでの約5年間、彰宏さんとともに歩んできました。彰宏さんには一生懸命育ててもらいました。東京オリンピックは初めは遥か彼方でしたが、彰宏さんが励まし続けてくれました。この約5年間の土台の上に今の私たちがあります。
日本代表の朴監督やコーチの皆様からのご指導ももちろん大きいです。しかし、今の日本代表には世界トップクラスのペアがたくさんいます。仲間であり、強いライバルでもあります。一歩上を行くには、彰宏さんのサポートが必要なのです。
去年の彰宏さんの監督解任の時には、再春館の西川会長に「彰宏さんが再春館を辞めたら自分たちも辞める」と伝えました。彰宏さんが再春館を退社すると知ったのは今年の2月でした。「彰宏さんの移籍先のチームで、一緒に東京を目指す」それしか私たちには考えられませんでした。
3月初め、私たちは彰宏さんに会って自分たちを引き受けてくれるよう頼みました。「引き抜き」ではなくて「押しかけ」です。その時知ったのですが、彰宏さんは去年の終わりに再春館退社を決めて、ある大学の監督になると一度は決まっていたそうです。私たちと東京を目指すのを一度は諦めていたわけです。
しかし、私たちは移籍をお願いしました。彰宏さんも岐阜トリパンも相当な覚悟で引き受けてくださいました。今回のことで、みなさまから応援のお言葉、ご心配のお言葉、ご批判のお言葉もいただいています。 でも、私たちにはこの道しかない。後悔したくない。そう思って前に進みました。ユーバー杯では日本の優勝に貢献できるようがんばります。日本チームへの応援をよろしくお願いいたします。
福島由紀
廣田彩花