デモで負傷し搬送されるパレスチナの男性=2018年5月14日午後3時12分、パレスチナ自治区ガザ地区、杉本康弘撮影
トランプ米政権による在イスラエル大使館の移転問題で、イスラエルを国家承認していないイランなどが批判を強めている。中東諸国は、イスラム教の聖地でもあるエルサレムをめぐってはパレスチナ寄りの姿勢を貫く。しかし、米国と蜜月関係にあるサウジアラビアや援助を仰ぐエジプトなどは強硬姿勢をとれず、連帯できないでいるのが実情だ。
イラン、トルコは強く批判
シーア派大国イランのエブテカール副大統領は14日、朝日新聞の取材に「(米国のような)超大国であっても、力を持って好きなことをするのは許されない。パレスチナの問題は、こういった超大国の横暴の象徴となっている。パレスチナでは罪のない人が犠牲になっており、国際的な取り組みが必要だ」と述べ、米国やイスラエルの姿勢を強く批判した。
エルサレムの首都宣言を非難してきたトルコのエルドアン大統領は13日の声明で「国際法の原則を無視するものだ」と批判。その上で、「トルコはパレスチナの同胞を支持し、決して孤立させることはない」とした。ヨルダンやレバノンも14日、相次いで米大使館の移転を非難した。一方、エジプトは米国への直接的な批判は避けつつ「パレスチナが東エルサレムを首都とする国家を樹立する権利を支持する」とした。
アラブ諸国、対米で足並みそろわず
エジプト国営通信などによると、アラブ連盟(21カ国・1機構)は16日にも対応を協議するため臨時の会合を開く。同連盟のアブルゲイト事務局長は14日、「(米大使館移転は)非常に危険な一歩で、米政権はことの重大性を理解していない」との声明を出した。
同連盟は4月15日にサウジアラビアで開かれた首脳会議で、エルサレムの首都宣言を「無効で違法」と非難した。議長国を務めたサウジのサルマン国王はこの会議を「エルサレムサミット」と形容し、パレスチナへの資金援助を表明。アラブ諸国の結束を演出した。
パレスチナ寄りの姿勢で一致する各国だが、米国との関係を巡り温度差がある。「アラブの盟主」を自任するサウジは、地域の覇権を争う「反イラン」という点で米国、イスラエルと共闘関係にある。イスラエルと国交があり、親米国でもあるエジプトなどは米国から軍事・経済支援を受けている。これまでパレスチナ問題で連帯してきたアラブ諸国の足並みがそろわなければ、今後の中東和平交渉にも影響を与え、地域の不安定化が進むことにもなりかねない。(テヘラン=杉崎慎弥、ドバイ=高野裕介、イスタンブール=其山史晃)
■欧州は反…