地下鉄サリン事件などを実行したとして死刑が確定したオウム真理教元幹部の林泰男死刑囚(60)が再審請求後、弁護士との接見に拘置所職員を立ち会わせないよう求め、東京地裁が認めたにもかかわらず、東京拘置所職員が立ち会いを続けていたことが関係者の話で分かった。弁護士と林死刑囚は刑事訴訟法が保障する「秘密交通権」が侵害されたとして国に賠償を求める訴訟を起こしており、23日に結審する予定だ。
2008年3月に死刑が確定した林死刑囚は同年12月、東京地裁に再審を請求した。14年4月には、再審請求の打ち合わせで弁護士と接見する際、拘置所職員が立ち会わないことも求めて同地裁に提訴した。
最高裁は13年12月、死刑囚が再審請求の打ち合わせで弁護人と面会する際は「特段の事情がない限り、秘密面会を認めないのは違法だ」と判断している。地裁もこれを踏まえて16年12月、林死刑囚と吉田秀康弁護士(東京弁護士会)の面会に拘置所職員を立ち会わせない決定を出した。
だが、吉田弁護士が東京拘置所に決定内容を伝えたにもかかわらず、秘密面会は認めてもらえず、17年4月まで計6回の面会に職員が立ち会った。吉田弁護士と林死刑囚が、立ち会いによって精神的苦痛を受けたとして計1320万円の賠償を求めた訴訟で国側は「拘置所は同様の決定を受けた経験がなく、ただちに効力が生じるとは思っていなかった」と主張。「慰謝料で償うほどの苦痛は生じていない」として、請求を棄却するよう求めている。
吉田弁護士は取材に「行政が司法判断に従わない、ゆゆしき事態だ。こんなことが許されれば、三権分立は成り立たない」と話す。
法務省は今年3月、オウム事件で死刑が確定した13人のうち7人を東京拘置所以外の拘置所に移送。仙台拘置支所に移った林死刑囚は現在、職員の立ち会いなしで弁護人と接見できているという。一方、広島拘置所に移った中川智正死刑囚(55)は、秘密面会を求めても接見に職員が立ち会いをしているとして、弁護団が近く提訴する方針だ。(阿部峻介)