抗生物質などの抗菌薬はウイルス性の風邪には効かないにもかかわらず、約6割の診療所は患者から強く求められると処方していることが、わかった。日本化学療法学会と日本感染症学会の合同調査委員会が1日、岡山市で開かれている学術集会で発表した。抗菌薬を誤って多用すると薬が効かなくなる耐性菌が増えることから、国は適正処方を求めている。
今年2月、無作為に選んだ全国1490カ所の診療所に郵送でアンケートをして、269カ所から有効回答を得た。ウイルス性の普通の風邪「感冒」と診断した患者やその家族が抗菌薬を希望した場合、「希望通り処方する」が12・7%、「説明しても納得しなければ処方する」が50・4%で、計約6割を占めた。
また過去1年間で感冒と診断した患者にどれくらいの割合で抗菌薬を出したかを尋ねたところ、「4割超」と答えた診療所が20・2%、「2割以下」と答えた診療所は62%だった。処方した理由は、「重症化予防」(29・8%)や「二次感染の予防」(25・8%)などで、医学的根拠が乏しいと思われる理由だった。
厚生労働省は普通の風邪に抗菌薬を使うことを推奨していない。適正使用に向けて医師向けの手引を配ったり、患者に説明して抗菌薬の使用を控えた場合に報酬が上乗せされる仕組みを導入したりしている。
調査にあたった、国立国際医療研究センター病院の具芳明医師は「抗菌薬はウイルス性の風邪に効かないことを一般の人にも広く知ってほしい。正しい情報をどう伝えるかが今後の課題だ」と話す。
同病院AMR臨床リファレンスセンターがホームページで一般向けに抗菌薬や耐性菌の解説をしている(
http://amr.ncgm.go.jp/
)。(水戸部六美)