国基準を上回る数の保育士を配置している認可保育園。「現場は今の数でもぎりぎり」という=東京都世田谷区
政府は14日の国家戦略特区諮問会議で、特区限定で「保育にあたる人の6割以上が保育士」などの条件を満たした認可外保育所に、国が運営費を補助することを決めた。保育士不足の中で待機児童を減らすため、少ない保育士で施設を開けるようにして受け皿を増やす狙いがある。だが、この特例で保育の質が下がると懸念の声があがっている。
特区は待機児童解消までの時限措置。厚生労働省は2019年度予算の概算要求に必要経費の計上を検討している。配置基準の緩和を提案してきた大阪府などでの適用を想定している。
国の基準では、認可保育所は原則、保育にあたる全員が保育士だ。認可外は全体の3分の1以上なら認められるが、運営費に国の補助はない。
今回認められたのは「地方裁量型認可化移行施設」(仮称)。保育士の割合が6割以上で、かつ一定の研修を受けた従事者を配置するなど自治体独自の取り組みが必要となる。条件を満たすと認められれば、5年以内に認可保育所へ移行する前提で、国の財政支援を受けられる。
しかし、自治体の判断で5年よりも長い期間にすることも認めており、期限は形骸化する可能性もある。
安倍晋三首相はこの日の会議で、「自治体の創意工夫による柔軟かつ適切な保育士の配置が実現する」と強調したが、現場からは反発の声があがっている。
全国福祉保育労働組合の沢村直(ただし)さんは「無資格の保育補助者は、保育士の雑務を軽くするために導入したはず。いつのまにか『保育に必要な最低人数』に組み込まれている」と批判。「保育にあたる無資格者の割合が高まれば、保育士にかかる負担は増える。負担が大きすぎて仕事をやめる人が増え、ますます保育士不足になってしまう」と話す。
保育園の質に関する国の検討会のメンバーで「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「保育士数の基準は無意味な規制ではなく、子どもたちの安全を守るガードレール。それを特区という抜け道で外すのは許しがたい。子どもたちの命を守る場所にビジネスの論理を入れるのが国家戦略なのか」とする。(浜田知宏、田渕紫織)
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会議後、内閣府地方創生推進事務局の村上敬亮審議官は、今回の決定について説明した。主な発言は以下の通り。
保育士の配置基準について、今回、6割が保育士ならば、残りは保育支援員を置けばいいよという(基準に変えるという)こと。
既存の保育園で6割になれば、既存施設を三つだったものを四つにできる。大阪府の試算だと、ほぼ待機児童がさばけるような施設整備ができる。
認可施設の中で基準を変えるのは岩盤で、大変なことになる。