年に1度の高級時計の国際見本市「バーゼルワールド」が3月開かれ、新作が一堂に会した。出品ブランドで最多級の111モデルを投入したのは、日本でも人気のオメガ。発表から70年を迎えた「シーマスター」シリーズにとりわけ力を入れた。
1948年に誕生したシーマスターは、ブランドを代表するシリーズの一つ。第2次大戦でイギリス軍に提供されたのがルーツだ。現在は防水性能とデザインの違いで、5ラインで展開している。
今回は、映画「007」のジェームズ・ボンドが着用したことでも知られる300メートル防水の「シーマスター ダイバー300M」シリーズから、一挙14モデルが登場した。93年の発売当初のモデルにはあったがその後消えた、文字盤の波模様が約10年ぶりに復活。シリーズ初の試みとして、ベゼルやブレスレットにゴールドを使ったモデルやラバーストラップのモデルも登場した。
レイナルド・アッシェリマン社長が推すのもこのシリーズ。「シーマスターのDNAを受け継ぎながらも、若い人たちをインスパイア(刺激)するため、特別モダンに仕上げた」と太鼓判を押す。
初期のシーマスターを復刻した限定品「シーマスター 1948」も出た。現行品と比べると、シンプルな顔つきだ。限定1948本。
シーマスターと人気を2分する「スピードマスター」シリーズからは、6モデルが出た。
注目は、スピードマスターでは初となるセラミックケースに、手巻きムーブメントを載せた「スピードマスター ダークサイド オブ ザ ムーン アポロ8号」。文字盤から内部が見えるようにしたため、ムーブメントの最上部に装飾されたクレーター模様がうかがえる。ブラックで統一され、際だった渋さだ。
女性向けには、クオーツ式のトレゾアを9モデル投入した。これまでは、約40ミリのケースサイズの機械式だったが、36ミリと39ミリとサイズを小さくしたうえで手間がかからないクオーツ仕様に変えた。明確に女性用を意識した戦略だ。
オメガは、本社のあるスイス・ビエンヌに昨秋新工房を造った。スイス政府の計量機関が高機能の時計に出す「マスタークロノメーター認定」を、2020年までに全ての機械式モデルで取るのが目標だ。
今回、シーマスターを含む新作の半数以上が認定を取得し、着実に地歩を固めている。(木村尚貴)