前半、先制ゴールを決めたパウリーニョ⑮を祝福するネイマール(中央上)らブラジルの選手たち=ロイター
(27日、ブラジル2―0セルビア サッカー・ワールドカップ)
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ゴールはまるでオセロのように、その一手で試合の流れもすべてをひっくり返してしまう。ブラジルが押し込まれていた前半36分、MFパウリーニョがするするとゴール前に現れた。
神出鬼没。そこへ、MFコウチーニョが1本の縦パスを送った。パウリーニョがつま先で突いたボールがGKをかすめ、ゴールに転がり込んだ。
「得点しようが、しまいが、チームを助けるのが自分の仕事だ」。29歳の先制点でチームは息を吹き返した。どこからでもわき上がるように好機を作り出す。ブラジルの強みを見せつけた先制点だった。
パウリーニョにFWネイマールのような柔らかい技術はないが、走れてチャンスとピンチを素早くかぎ分ける。抜群のボール奪取力の一方、南米予選では出場11試合で6得点。チームを支える万能のMFだ。
主力だった前回大会は準決勝でドイツに惨敗。以降、波乱に富んだ時間を過ごした。
イングランドで実績を残せないまま、中国リーグに渡った。代表も外れた。「失ったのは自信だった」
転機は、南米予選途中で代表監督がチチに代わったことだ。日本で開催された2012年クラブW杯で優勝したコリンチャンスで、ふたりの信頼関係は深まった。チチ監督は代表チーム改革の第1歩として、世界中に散るブラジル人選手の情報をかき集め、迷いなくパウリーニョを呼んだ。組織的な守りを植え付けるキーパーソンとして。
「この4年間で、人生もキャリアも大きく変わった。自分を磨き、多くのことを経験した。努力をしたから、いまの私がある」
昨季から欧州に戻り、バルセロナに移籍。自信を取り戻した今は、中国に渡ったことを「いい経験だった」といえる。(潮智史)