ベンチで声を張りあげ合う広島商の安長大樹(右)と春樹(左から2人目)=三次きんさい
しまっていこー 広島商
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安長大樹と安長春樹。ふたごの兄弟は、ともに広島商の野球部に憧れ、「甲子園」を目指し、入学した。あれから2年半。2人そろってベンチに入り、広島大会の初戦を迎えた。
外野手の兄・大樹と投手の弟・春樹。ポジションは違うが、メンバー入りを目指して走り続けてきた。転機は昨夏。けがをしていた大樹が、引退する先輩たちからの指名で主務になった。2人の歩む道は、少しずれた。
大樹は献身的にチームに尽くしてきた。練習メニューを考え、指導者への心配りも忘れない。グラウンドの隅々まで見渡し、ときには嫌われ役をかってでた。そんな兄の心の裏側を、春樹は知っていた。
きっかけは母・由佳さんの言葉だった。新チームになったばかりの頃だ。「あんた1人の高校野球じゃないんで」。母は大樹から「野球がしたい」という思いを唯一、聞いていた。それを聞いて以来、春樹は練習で手を抜けなくなった。「大樹が見てるから」
今春以降、さらに追い込んだ。選手を平等に見る立場の大樹ですら、「投手陣で一番投げ込んでいた」と認めるほど。そして、この夏。春樹は背番号10を勝ち取った。入部以来、初めてのベンチ入りだった。
初戦の庄原格致戦。春樹に出番はなかった。その分、声をはりあげた。大樹は制服姿でスコアブックをつけながら戦況をみつめた。チームは13―0(七回コールド)で2回戦に駒を進めた。
そろってユニホーム姿でベンチに入ることはできなかった。入学当時に描いていた未来とは、少し違う。不祥事で対外試合禁止処分を受け、苦しんだ。西日本豪雨の被災状況を知って、野球をしていいのかも悩んだ。それでも、最後の夏まで2人でたどり着いた。
大樹は言う。「春樹のベンチ入りはみんなが認めてくれている。正直、びっくりですけど、うれしいです」。春樹は鼻息が荒い。「次、出番があったら、全力でいきます。あいつの分も」(小俣勇貴)