初めてできた闘ヤギの常設場で、勢いをつけて角をぶつけあうヤギ=2018年5月27日午後0時57分、沖縄県西原町、伊藤和行撮影 ヤギ同士が勢いよく角をぶつけ合って闘う沖縄の伝統文化「闘ヤギ(ピージャーオーラサイ)」が、全島的な盛り上がりを見せている。観光用としても注目され、ヤギ刺しやヤギ汁といった沖縄料理と合わせた需要の高まりから、「見てよし、食べてよし」とヤギを飼う農家も増加中だ。 沖縄県中部にある西原町の丘のふもと。4月下旬、県内で初めて闘ヤギの常設場がオープンした。 高さ約1メートルの柵で囲われた直径約6メートルの円の中で、体長1メートルほどのオスヤギがにらみ合う。ヤギ使いが「オー、オー」とかけ声をかけると、ヤギは後脚で立ち上がり、頭を振り下ろした。ガツッ。激しく角がぶつかり合った。観戦した近くの佐久本綾乃さん(41)は「一度は見てみたかった。迫力がすごい」と興奮していた。 運営するのは西原町の障害者就労支援事業所「ちむてぃち」と近くでヤギを飼う「闘ヤギ西原牧場」。東江(あがりえ)貴広所長によると、入所者らが世話しながら収益も得られる事業として、闘ヤギに注目した。 闘うのは5歳程度のオスヤギで、計約20頭を飼う。観客は無料で観覧でき、併設された食堂ではヤギ汁や沖縄そばなどを食べられる。東江所長は「観光スポットとして定着させたい」と期待を膨らませる。 本島北部の名護市では3月、全島から18頭を集めた初めての闘ヤギ大会が開かれた。制限時間15分以内で、逃げ出したり闘う気力を失ったりすると審査員が負けと判断する。約1700人が観戦した。 企画した名護市勝山山羊(ヤギ)生産組合代表の仲里政和さん(69)は「これまでは一部地域だけだったが、観光客が物珍しさから注目し、各地で集客イベントとして開かれるようになった」と喜ぶ。昨年は石垣島や本島最北端の国頭村(くにがみそん)でも初めて大会が開かれた。 仲里さんによると、闘ヤギは戦後、ヤギを飼う農家の娯楽として盛んだった。都市化とともに農家もヤギの数も減り、一時途絶えかけたが、近年の観光客の増加とともに沖縄独特の文化として注目されるようになった。 沖縄ではヤギは食肉としても見直されている。県によると昨年12月現在、県内のヤギ農家は1408戸で飼養数は1万616頭。5年前から増え続け、ヤギの数は4割近く増加した。闘えなくなったヤギは食用になる。仲里さんは「ヤギによる地域興しを進めていきたい」と話している。 「虐待だ」という批判を受けることも 沖縄では闘ヤギ以外にも、闘牛や闘鶏など家畜同士を闘わせる見せ物が伝統的な文化として残る。元々は強い種を残すためだったり農家の娯楽だったりしたが、現代では興行色が強くなり、動物愛護の観点から「虐待だ」という批判を受けることもある。 沖縄の家畜と民俗文化に詳しい「沖縄こどもの国」元園長の高田勝さん(58)は「批判に真正面から答えられるよう、歴史や文化、動物の習性などを整理しておくべきだ。残虐なイメージを払拭(ふっしょく)するため、家畜に危険がないようルールを見直したり、獣医師を配置したりする取り組みも必要だ」と指摘する。(伊藤和行) |
「闘ヤギ」、観光資源として注目 引退後は食用に 沖縄
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