内戦が続くシリアで、アサド政権軍がほぼ奪還した南部から、ボランティア救助組織「シリア民間防衛隊」(通称ホワイトヘルメッツ)のメンバーや家族ら数百人が、隣国イスラエルを経由してヨルダンに退避した。イスラエル、ヨルダン両国が22日明らかにした。
メンバーらはヨルダンに一定期間滞在した後、英国、ドイツ、カナダに渡る見通しという。ヨルダン外務省は、移送に国連が関与しているとし、「人道的な理由」で受け入れたという。またイスラエル軍はシリア内戦に介入しない立場を強調しつつ、「市民の生命の危険が差し迫ったことから、米国や欧州の国々の要請を受け、人道的な取り組みを行った」とした。
ホワイトヘルメッツは欧米などから資金提供を受けている。非武装中立の立場を唱えるが、反体制派の支配地域で活動してきたため、アサド政権や政権を支援するロシアから敵視されている。
4月に発生したダマスカス郊外・東グータ地区での政権軍側による化学兵器使用疑惑では、ロシアが「使用の根拠とされた映像は、英国から圧力を受けたホワイトヘルメッツによるやらせだ」と主張した。
シリア南部では、6月中旬からの政権軍側の攻勢を受け、反体制派が停戦に合意した。北西部イドリブ県の反体制派地域へ、合意を拒むメンバーや家族の移送が続いている。(エルサレム=渡辺丘、イスタンブール=其山史晃)