三菱重工業の小口正範副社長は3日の2018年4~6月期決算会見で、トルコで計画する原発の採算性調査を終え、報告書をトルコ政府に先月末に提出したと明らかにした。今後は日本政府も交えて、着工に向けた条件の協議に入る。建設費は想定の2倍超の4兆円以上の見込みで、費用を抑えたいトルコ側と折り合えるかは不透明だ。
三菱重工は日本政府の後押しを受け、フランスやトルコの企業と企業連合を組み、トルコ北部のシノップ地区に原発4基をつくる計画。仏企業と共同開発した新型炉を採用する。
今年に入り建設費が想定外にふくらむ見通しが判明し、トルコ側が報告書の受理を渋ったため、採算性調査の期限を3月末から延ばして精査していた。
小口氏は報告書の内容について「守秘義務もあって答えられない」としたが、関係者によると、精査後も報告書の内容に大きな変更はなかったという。原発の安全基準の強化は世界的な流れで、トルコは地震国でもあり、「建設費の大幅な抑制は難しい」(三菱重工幹部)ためだ。
計画は、2013年に安倍晋三首相とトルコのエルドアン首相(現大統領)が会談したのをきっかけに動き出した。今後のトルコ政府との協議では、日本政府による資金支援も話し合われる見通し。2023年からの稼働が目標だが、小口氏は「(稼働を)いつにするかというのも話し合う」と述べ、見直しを示唆した。(内藤尚志)