日本国内に約6万店あるコンビニエンスストア。その商品棚には毎週100種類もの新商品が並び、激しい「生存競争」にさらされている。新商品はどのように生まれ、そして鍛えられていくのか。7月中旬に売り出された「豆乳バナナスムージー」開発の舞台裏をのぞいてみた。(文中敬称略)
コンビニPBの黒衣メーカー ただの請け負いじゃない
社長の一言 会議室に緊張走る
6月中旬、東京・大崎のコンビニ大手ローソン本社。社長の竹増貞信(48)ら役員5人が会議室に集まっていた。月2回開かれる新商品の試食会。商品化を前に、味や盛り付けなどを役員が確かめる「最終関門」だ。
この日、試食の対象になったのは29商品。次から次へと運ばれる食べ物や飲み物を、役員たちは一口ずつ味わっていく。
竹増の前に、豆乳をベースにしたスムージーの新商品候補が置かれた。昨秋に「豆乳スムージーフルーツミックス」という商品を出していたが、リピーターがつかなかった。そこで味を見直し、「豆乳バナナスムージー」として再チャレンジをめざしたものだ。
竹増は、比較のために用意された従来品と新商品を交互に飲み比べた。開発を担当している村田文子(43)は、最近の豆乳市場の動向や従来品の反省点などを4分ほどかけて説明した。
説明を聞き、試飲を終えた竹増が感想を述べた。
「ずっと豆乳を飲んでいる人には、やや物足りないかな」
会議室に緊張が走った。コンビニの役員試食会と言えば、セブン―イレブンを育てた名誉顧問の鈴木敏文が、冷やし中華一つで、11回も作り直しを命じたという「逸話」が語り継がれている。
竹増は「ただ…」と続けた。「出してみて調子が悪かったら、次は思い切り豆乳寄りに挑戦してみて」
竹増の反応を見て、村田は、ほっと胸をなでおろした。飲料の開発担当として4カ月以上、試行錯誤を重ねてきたスムージーを、ようやく店頭に並べられると。
■試作20回 味は決…