米中西部オハイオ州の下院12区補選が7日、投開票された。トランプ大統領の信任を問う11月の中間選挙前に行われる最後の国政選挙で、与党・共和党の州議会上院議員トロイ・ボルダーソン氏(56)が、野党・民主党候補のダニー・オコナー氏(31)をわずかに上回り、勝利宣言した。
ただ、共和党が30年以上も議席を維持してきた牙城(がじょう)で接戦に持ち込まれたことは、2016年の大統領選で起きた「トランプ旋風」が失速し、民主党の勢いが広がっていることを鮮明にした。
開票の結果、共和のボルダーソン氏が10万1574票(得票率50・15%)、民主のオコナー氏(31)が9万9820票(同49・29%)で2千票差以内の大接戦だった。ボルダーソン氏は7日夜、支持者を前に、「この選挙区のために死にものぐるいで働く」と勝利宣言した。ただ、米メディアによると、再確認が必要な票が4千票近くあるといい、正式に勝者は確定していない。また、両者は11月の中間選挙で再び戦うことになる。
同区は、トランプ氏を熱狂的に支持する白人労働者が多い「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)の一部で、保守層が強い。1982年以来、共和が議席を保ってきた。16年の大統領選ではトランプ氏が11ポイント差で勝利し、同時にあった下院選でも現職が35ポイント以上の差で圧勝するなど、共和が「勝って当然」の選挙区だった。直前の世論調査では、支持率44%のボルダーソン氏を、オコナー氏が43%と追い上げていた。
共和はトランプ氏が直前の4日に現地入りして演説し、ペンス副大統領も投入。好調な経済や移民対策の強化など実績を訴えて逃げ切った。しかし、トランプ氏の排外的な言動に、郊外に住む女性や穏健な保守層などが反発。投票に行かないなど、「トランプ離れ」も印象づけた。トランプ氏の信任投票となる中間選挙を3カ月後に控え、トランプ政権と共和は大きな不安を抱えることになった。
米国では、トランプ政権が目玉政策と位置付ける中国などへの関税措置による制裁で、輸入品の価格が上がっている。さらに、中国との「貿易戦争」のあおりで、同区の主要作物である大豆農家や、自動車工場をはじめとした製造業に「痛み」が出始めたことも、今回の苦戦の原因とみられる。
民主党のオコナー氏は、保守層に人気のない民主党の幹部とはあえて距離を置き、社会保障などの政策を訴えた。銃規制の問題でも、安全対策の充実といった中道路線をとり、トランプ氏の排外的な言動を嫌う穏健な保守層の取り込みを図っていた。
最近の下院補選をみると、共和党は苦戦を強いられている。3月のペンシルベニア州補選では、共和の地盤にもかかわらず敗北していた。(ニューアーク〈オハイオ州〉=土佐茂生)