ポップスみおつくし 大阪市立大学教授・増田聡
TikTok(ティックトック)というスマホアプリをご存じだろうか。現在10代から20代の若者に大人気のソーシャルアプリである。音楽に合わせて短い「口パク動画」を撮影でき、それを投稿することができる。数十万人のフォロワーを集める人気投稿者もおり、そこからタレントとして活躍する者も現れている。
アメリカでは2015年に始まった「リップシンクバトル」というテレビ番組が人気だ。俳優やタレントたちがヒット曲の「口パク」パフォーマンスを競うこの番組は話題を呼び、放送するケーブルテレビ局の売り上げを押しあげるに至った。
かつて「口パク」は隠蔽(いんぺい)されるべきものだった。生演奏を掲げるテレビ番組でもしばしば口パクは行われていたが、視聴者に気づかれることはタブーであった。08年の北京五輪では、登場した少女歌手の歌唱が口パクであったことがスキャンダルとなり、中国では「プロ歌手によるコンサートでの口パクを禁止する」法律が施行されている。
口パクがタブー視されるのは「…