2000年シドニー大会で高橋尚子、04年アテネ大会で野口みずきと、五輪2大会連続で金メダルを獲得したマラソン日本女子。近年は低迷しているが、潜在能力のある若手がデビューしたり、8月のジャカルタ・アジア大会で銀メダルを獲得したりと、光が差してきた。
8月26日、北海道で初マラソンの鈴木亜由子(26)=日本郵政グループ=が2時間28分32秒で優勝し、2020年東京五輪の代表選考会、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC、19年9月開催)への出場権を得た。
鈴木は一昨年のリオデジャネイロ五輪の5000メートルや昨年のロンドン世界選手権の1万メートルに出場するなどトラックで実績を残し、マラソンへの期待が高まっていた。
初マラソン初優勝に、日本陸連の山下佐知子五輪強化コーチも「後半もしっかり走り切ることができ、20年の本番に向けて内容的に素晴らしかった」と話し、「メダル候補」と高く評価した。鈴木は「練習では自分の足が壊れるのでは、という怖さもあったが、とりあえず1本、形にすることができた」と語った。
くしくも鈴木が優勝したのと同じ日、ジャカルタ・アジア大会では野上恵子(32)=十八銀行=が2時間36分27秒で銀メダルを獲得。気温、湿度とも高い過酷な気象条件のなか、価値ある表彰台だった。
男子の驚異的な世界記録に沸いた9月16日のベルリンでも、日本勢の女子が光った。
今年1月の大阪国際で初マラソンに挑戦し、2時間22分44秒の日本歴代9位の好記録で優勝した松田瑞生(23)=ダイハツ=が、さらに21秒更新して5位に入った。
2時間20~21分台の記録をめざして前半から飛ばし、中だるみはあったが、終盤にもペースアップ。ダイハツの林清司監督は「後半、持ち直したし、暑い中での練習も経験し、来年のMGCにつながる」と評価する。
このレースではリオ五輪や昨年の世界選手権でトラックレースに出場した上原美幸(22)=第一生命=が初マラソンに挑戦し、2時間25分46秒で6位に食い込んだ。MGCの出場権はとれなかったが、次戦で2時間30分14秒以内で走れば、2レースの平均が2時間28分00秒以内となり、進出が決まる。
自前のペースメーカーについて走った上原は後半が前半より1分8秒速い「ネガティブスプリット」。「マラソンには怖いイメージしかなかったが、楽しんで走れた。今回はあまり練習が積めなかったので、積み直して出直したい」と抱負を語った。
MGCへの出場権を得ている女子はここまで8人。シドニーからロンドン五輪まで4大会連続で代表を送った天満屋も前田穂南(22)、小原怜(28)が進出を決めている。ベルリンでは1~3位までをアフリカ勢が占め、3人とも2時間18分台で走破した。世界との差は依然大きいが、戦う芽は出つつある。(堀川貴弘)