労働組合の中央組織・連合は18日、来年の春闘から基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)率を、要求の前面に掲げる方針を見直すと発表した。月額賃金の具体額をより重視し、中小企業の待遇の底上げを狙うという。労組は長年、連合のベア目標を旗印に春闘に臨んできており、大きな方針転換となる。
この日の中央執行委員会で決めた、来年の春闘方針の骨格である「基本構想」に盛り込んだ。その中で従来の賃金の上げ幅だけでなく、「賃金水準を追求する闘争の強化をはかっていく」とした。
連合は来年の春闘の要求にベアの上げ幅も引き続き残すが、毎月支払われるのが望ましい賃金の具体額を企業規模や年齢などに応じて複数明示。春闘交渉を通じて、その水準に近づけていくように傘下の労組に呼びかけていく。
これまでの春闘ではベアの目標を前面に掲げ、傘下の労組はそれを目安に経営側と交渉してきた。今年までの3年間は連続してベア要求を「2%程度」とし、定期昇給分とあわせて「4%程度」の賃金引き上げを求めてきた。
しかし、今年は安倍政権が「3%以上」と数値目標にまで踏み込んで経済界に賃上げを促す異例の対応を見せ、経団連もこれに応じるなど政府主導の「官製春闘」に拍車がかかった。
連合には、ベアだけに注目が集まる要求方式を転換し、月額賃金の水準に焦点をあてることで春闘での主導権を取り戻す狙いもありそうだ。ただ、目標が多岐にわたることになれば、労組の中央組織としての存在感が薄れる恐れもあり、こうした方法が定着するかは不透明だ。20年以降の方針は今後議論するとしている。(滝沢卓、土屋亮)