三菱重工業が開発する国産初のジェット旅客機MRJをめぐり、カナダの航空機大手ボンバルディアは、自社の企業秘密を不当に使われたとして米シアトルの連邦地裁に三菱重側を提訴した。三菱重側がボンバルディアの複数の社員を勧誘し、航空当局のお墨付きである「型式証明」をとるための機密情報を漏らさせたと主張。不当に得た情報の使用禁止や、損害賠償の認定などを求めている。
19日付の訴状によると、三菱重の子会社でMRJを開発する三菱航空機は、型式証明取得などのために雇った在シアトルの米企業とともに、ボンバルディアの現役技術者らをリクルート。技術者らはボンバルディア離職前に重要データを私用メールに送るなどし、機密情報を不当に漏らしたとしている。
訴状は「三菱側は少なくとも92人の元ボンバルディア社員を雇っている」と指摘。機密情報を得るために従業員を勧誘する行為も差し止めるよう求めている。
MRJ(座席数70~90席)は開発が難航しており、納期を5回延期した。大きなハードルの一つが、各国の航空当局からの型式証明の取得だった。ボンバルディアはMRJのライバルとなる小型機「Cシリーズ」(100~150席)をすでに量産。米国やカナダの型式証明を取得した経験がある。
三菱重は「先方の主張には根拠がないと考えている。訴状の内容を確認して詳細を検討し、しかるべき場でそれを証明していく」(広報)としている。(江渕崇=ニューヨーク、友田雄大)