イラン出身でイスラエルの国民的な人気歌手、リタさんが来日する。11月6日、東京オペラシティで東京交響楽団の演奏をバックに、EXILEのボーカル、ATSUSHIさんとの共演でコンサートが開かれる。初来日を控え、リタさんは朝日新聞の電話取材に「音楽は国境や文化の違いを超える。日本の皆さんと出会い、歌うことを楽しみにしている」と話した。
コンサートは、在日イスラエル大使館が同国の建国70年を記念して開催。リタさんは、イランの古い流行歌を現代風にカバーした代表曲「シャーネ」をイランの公用語ペルシャ語で歌うほか、イスラエルの公用語ヘブライ語や英語などで計10曲以上を披露する。
1962年、テヘランで生まれ、8歳でイスラエルに移住した。イランで79年にイスラム革命が起きた後、両国が断交したため、リタさんは親族を訪ねることができなくなった。
「『半分イラン人、半分イスラエル人』の物語を世界に伝え、両国の橋渡し役になりたい」と願い、ヘブライ語だけでなくペルシャ語の歌にこだわる。2013年にはニューヨークの国連本部でも歌った。
分断と対立が世界を覆う。イスラエルとイランの政治指導者は非難し合い、パレスチナとの和平の道筋は全く見えない。「アーティストの仕事は夢や平和、愛を届けること。たとえ国同士が戦争状態にあっても、人々は夢を見ることができる。私たちは謙虚になり、他者の考えを尊重することができる」とリタさんは話している。(エルサレム=渡辺丘)