国の重要文化財で大阪・中之島のシンボル「大阪市中央公会堂」が17日に開館100周年を迎える。大正期に建設された赤れんがの近代建築は、市民たちが暮らす街の風景に溶け込んできた。100年の歴史の中では、世界的な著名人の講演にも使われた。
完成見ぬまま世を去った大阪商人の心意気、公会堂に結実
中央公会堂の周囲は大阪有数のオフィス街。高層ビルが立ち並び、すぐ北側には堂島川、南側には土佐堀川が流れている。朝夕の通勤時間帯には早足の会社員たちであふれ、天気の良い午後は家族連れや観光客などの人波が絶えない。
日が落ちた午後6時からはライトの白光が彩り、背景には高層ビルが迫る。ライトアップされた公会堂を見ようと、人々は時折足を止める。
中央公会堂は地上3階建て地下2階で、外観の赤れんがが特徴のネオルネサンス様式の建物だ。東京駅の設計に関わった建築家の辰野金吾らが設計し、1918年10月に5年がかりで竣工(しゅんこう)し、翌月に開館した。
最も大きいホール「大集会室」では、大正後期にロシアやイタリアといった海外の歌劇団が公演を行った。第2次大戦中はエレベーターや階段の手すりなどが、武器を生産するための「金属供出」で撤去された。空襲などの被災者の収容所にもなった。
戦後は、世界的な著名人が講演会を開いた。55年、視覚と聴覚を失いながら世界各国を訪ね、障害者教育の発展に尽くしたヘレン・ケラーが来阪。61年に人類で初めて有人宇宙飛行に成功したユーリ・ガガーリンはその翌年、公会堂に招かれた。97年には旧ソ連最後の大統領ミハイル・ゴルバチョフ氏が登壇した。
大阪市は1999年から保存・再生工事を施し、2002年には国が公会堂建築物として西日本で初めて重要文化財に指定した。年間の総入館者数は約100万人に上る。館内を回るガイドツアーはすでに今年分は予約で一杯だ。
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中央公会堂は開館100周年にちなみ、16~18日は無料で館内を見学できるクイズラリーを開催。事前申し込み不要。16~18日の午後5時~翌午前0時には、特別ライトアップも実施している。(吉川喬)