刀剣ブームを受けて大盛況の展覧会から、がらりとテーマが変わる次の企画展に来館者を誘導したい――。そんな思いから、徳川美術館(名古屋市東区)が「ちょっと商売っ気が強い」というユニークな試みをした。はたして成果は出るか。
5月中旬の休日、美術館には開館前から数十人の行列ができていた。お目当ては特別展「徳川将軍ゆかりの名刀」(2日終了)で展示中の刀剣だ。家康が愛用し、息子で尾張徳川家初代藩主・義直に渡った脇差(わきざし)「名物 物吉貞宗(ものよしさだむね)」(重要文化財)のガラスケース前では、食い入るように見つめる女性の姿が見られた。
徳川美術館で広報を担当する吉川由紀さんは「10連休中は連日3千人近い来館がありました。ここまでの人気になるとは」と驚きを隠さない。
展示テーマによって人出に差が出ること自体は仕方ないと受け止めている。それでも、この勢いを6月8日からの企画展「裂(きれ)の美」につなげたい。そんな声が出た。次の企画展では、書画の表具や茶道具の包みなどに使われてきた金襴(きんらん)や更紗(さらさ)といった貴重な裂地(きれじ)を紹介する。洗練された文様の「名物裂」には目を見張るが、刀剣と比べて印象が地味なのは否めない。
企画展「裂の美」の後、7月末からの特別展「合戦図」では、中世の絵巻から近世の屛風(びょうぶ)まで合戦を描いた展示品を並べる。ファンも多い「手堅い」内容であるだけに、来館者数の平準化を図れればそれに越したことはない。
そこで考えたのが、「裂の美」…