文豪・夏目漱石(1867~1916)が英国に留学した際の資料を集めた「ロンドン漱石記念館」が8日、ロンドン郊外で開館した。2016年までロンドン市内にあった同館の展示を移し、3年ぶりに再開した。
展示しているのは、漱石が英国に滞在した1900年からの約2年間に購読、購入した雑誌や書籍、鑑賞した演劇のパンフレット、外国語に翻訳された漱石の小説など約1万点。英国在住で漱石研究者の館長恒松郁生・崇城大名誉教授(67)が個人的に収集した。
ロンドンで開館中の85年10月にはオックスフォード大学に留学中だった天皇陛下が訪れ、漱石の作品が海外で関心を持たれている理由などについて熱心に質問された。「好きな作品を伺ったら、『坊っちゃん』とのことでした」と恒松さん。今回、訪問時の写真や「徳仁(なるひと)」と書かれた記帳も公開している。
同館はロンドン市内の漱石最後の下宿先近くで84年に開館したが、資金難などで閉館。研究者や漱石ファンから再開を求める要望を受けて、英南部サリー州の恒松さん宅の一部を記念館として改装した。
「留学時代の漱石は失敗も多く、人間的な魅力を感じる。様々な資料で当時を再現したい」と恒松さん。
訪問希望者は同館のフェイスブックを通じて申し込む。当面は入場無料。(ロンドン=石合力)